手がかりを掴んだ日 ページ9
あの日以来から、ボーはいつもの席に座って彼の大好きな本当の家族を待っていた。
呆然と沼地を眺めている彼は、どこを向いているかは顔を覆い隠すわたしとおそろいのヘルメットも相まって分からない。
「ルーカス……ヘンリーはどこに行ったんだろうね……」
どこか上の空な声で、隣に座る私の手を握るボー。
ボーときたら、ヘンリーを待っているのかずっと三人でよく共に飲んでいた席に座り続けていた。
家に帰らずろくなご飯も食べないで、ただただ来る日も来る日も座って待ち続けていた。
「ヘンリーの好きな曲、俺と君とで奏でたら……ひょっこりと帰ってくるんじゃないかな……」
彼は空いている片手で傍らに置いていた一本の弦しかないギターを手にした。自分もいたたまれなくなって、ドラムを空いている手で膝の上に置く。
ここ最近ずっとこんな感じで、周りのおっさんたちも私たちに声をかけるのをためらっているように見える。
「レコードで何度も聞いたけど、勘で思い出しながら奏でるけど……」
「……」
「そうか、君も奏でてくれるんだね。嬉しいよ」
どこか上の空ながらもちゃんと言葉を発し、私の手を離す。
ギターの絃を振るわせて、音を奏でる。自分はドラムで適当だと思える音を奏でる。音の感触はボーの指導のおかげで、音をリズムに乗せるのは容易であった。
音がバーだけでなく沼地に響き渡り、他の者たちも無意識に音に耳を傾けているように見える。
そんな中、初めて見るハゲ頭の髭が濃いおっさんがバーへとやって来た。彼の後ろには、個性的な男たちが並んでいた。
彼らは私たちに一回目線を寄越して、そしてそのまま近くへとやって来た。
「……なあ、ブラッド……もしかしたら、そのレコード……」
赤い仮面を頭に被ったレスラーな格好をした男は、ハゲ頭の男に寄る。
彼の手には黒いレコードがあり、それをバーのマスターの横にあった蓄音機に入れ込んだ。
「こ、この曲は……！？」
「……！」
横にいるボーが突然驚いた声を上げて、蓄音機へと近寄る。
自分もつられて近寄ると、そこからはボーが先程まで奏でていたメロディと全く同じだった。それを聞いた彼は、それを流したであろうおっさんの方へと顔を向けた。
「これは……俺の兄弟、ヘンリーが好きな曲……まさか、ヘンリーの居場所をっ！？」
ハゲ頭のおっさんは、ただただ私たちを見詰めているだけだった。
「……分かった、君についていく。俺とルーカスを、ヘンリーの元へ連れてってくれ」
ボーは席に置いていたギターと私のドラムを片手に取り、私の手を片手で握っておっさんたちの方へ歩みを進めた。
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さとうみさん - ラムネサイダーさん» ありがとうございます！今さらご返信なんて、とんでもないことをしていますが同士様がいらっしゃるとは！嬉しい限りです！またいつかLISAは短編でどこかで書こうと思っておりますので、そのときはよろしくおねがいします！ (2020年9月20日 22時) (
レス) id: 3ed32e075b (このIDを非表示/違反報告)
ラムネサイダー - ジャックとボーが大好きなので最高です。 (2020年8月19日 21時) (レス) id: 36b99241c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さとうみさん | 作成日時：2020年4月24日 23時
