小さな光を見付けた日 ページ39
「なあ、A」
ぼうぼうに髪を伸ばしたバディは腕の中に小さな子どもを抱えていて、私に近寄って来る。
それを見かねたボーとジャックは、バディに近寄ってどうしたのかと訊ねていた。
「オレ、これから水や食料を取りに行くからな。どうかコイツのことを見てくれねえか?」
「あ、うん……確かにブラッドは動けないからね」
「じゃあ、俺たちで見てあげるからね。いってらっしゃい」
バディを見送り、彼女の子どもである男の子をジャックに渡す。
自分は傍らにいた自分の子どもで、どこぞの誰かの遺伝子を強く受け継いだ茶色の髪の小さな女の子を抱き上げる。
「……はあ、バディ……誰の子どもを産んだんだろ……」
「さあね。よく分からないや」
「まあ、結構狙われていたからなあ……でも、子どももとっても可愛いね」
ボーたちとバディの息子を見つめてはつんつんと頬をつつく。
可愛いなあと思いつつ、自分の娘と見比べる。
やはりどちらも可愛い。くりくりの黒い瞳と長めの茶色の髪。多分洗えば、結構綺麗になると思う。
「だー!まーまー!」
「うん、お母さんだよ。私だよ」
「ぱーぱー、だーっぅ!」
「あはは、自分以外の子どもを相手しているから妬いているのかな?」
「じゃあ、俺がその子を抱っこしてあげるから。ジャックは自分の娘でも抱っこすれば良いよ」
ジャックからバディの息子を優しく取って、抱き上げる。
ジャックに自分たちの娘を手渡すと、幼女はきゃっきゃっとはしゃいでお父さんの腕の中で嬉しそうにしていた。
「この子も将来は、バディの子と家族になるのかな」
「さあ?もしかしたら、昔のAのように悩むのかもしれない」
この子がどの道を進んでも良い、そんな感じで彼女に接している。
私は人類の為にこの子の母親として生きることに決めたのだが、この道で良かったと本当に思っている。
ボーも旦那のジャックも優しくて、娘も可愛い。バディは前より幾分も性格が丸くなって、母親らしい振る舞いがある。彼女と交流を深めて、今では親友的な立ち位置の人物になっている。
「おーい、帰って来たぜ」
「あ、バディ。おかえりなさい」
「家の方に食料や水は置いて来た。見てくれてありがとな」
バディは自分の息子を抱えて、帰って行く。
彼女を見送り、自分たちは向かい直る。
「バディもブラッドも幸せそうだね」
「何を言うんだい。俺たちもとても幸せだろう?」
「私、家族が増えてとても嬉しいよ?」
笑っていると、彼らも笑ってくれる。柔らかいこの雰囲気が、たまらなく愛おしい。
お父さん、とても幸せです。生き残らせてくれてありがとう。
【番外編】本当のことに自覚した日→←人類の小さな前進を見た日
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さとうみさん - ラムネサイダーさん» ありがとうございます!今さらご返信なんて、とんでもないことをしていますが同士様がいらっしゃるとは!嬉しい限りです!またいつかLISAは短編でどこかで書こうと思っておりますので、そのときはよろしくおねがいします! (2020年9月20日 22時) (レス) id: 3ed32e075b (このIDを非表示/違反報告)
ラムネサイダー - ジャックとボーが大好きなので最高です。 (2020年8月19日 21時) (レス) id: 36b99241c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さとうみさん | 作成日時:2020年4月24日 23時