人類の小さな前進を見た日 ページ38
次に目を覚ますと、私の顔を覗き込むような体勢と背景に空が晴れ渡っている光景が見えた。
こんなに綺麗に空を見たのは初めてなような気がして、ぼうっとその美しさに見惚れてしまう。
「A、全て終わったんだ。バディがジョイのワクチンを飲んだ。元凶のヤドーという男も死んだ」
「ほ、ほんと？」
「あぁ、これで女性が二人いる希望の有る世界になったんだ」
ボーは嬉しそうに言ったが、「そ、そう言えば……まだAはどっちにするか選んでなかったね」と申し訳無さそうな声色で告げてきた。
確かに私はまだ決断をくだしていない。
女性としてこの世で生を産み落とすか、それとも何もせずにただ死を待つか。
「私、お母さんになる」
ボーに伝えつつ、先程まで見ていた夢をぼんやり思い出す。
お父さんと名乗った人物が私の前に来て、何かを話してくれた夢。内容は覚えていないけど、とても落ち着いて何故か少しだけ悲しくなるような夢だった。
彼の思いの為に、自分も成すべきことはしなければ。
「でも、お母さんになるって言ったって……誰をお父さんにするんだい……？」
ボーの質問に身体が固まる。
そうだ、前にボーに訊いた時に男女がどうのこうのって言っていたし……マグでも裸の男女が重なっているシーンを思い出した。
「……………誰かお父さんになってくれる人ー……？」
小さな声で、ゆっくりと声を漏らす。
もちろん誰も返答してくれる訳が無い、はぁと小さく溜め息をつくしか出来ない。
「ボー？」
「俺は無理だよ、君を赤ん坊の頃から見ているんだ。家族同然の人物に手は出せないよ」
「じゃあ、僕は？」
「んー…………んっ！？」
突然横から飛んで来た聞き覚えのある声に、身体がぴしりと固まる。
私の肩を優しく掴んでいる男が、顔へと移動していき声の方へと顔を向かせてくる。
「ねね、いいでしょ？僕はAのことはそこそこ知っている。まあ、ルーカスの時の方が全てだけどさ」
「え、ジャ、ジャック？」
「そうだね。彼なら俺も安心できるよ、ゆっくりで良いんじゃないのかい？」
ボーは小さく笑って、私とジャックを巻き込んで抱きしめてくる。
彼が一番大きいので、私たち二人を包み込むのは簡単だろう。
「……A、他の人が良いかい？周りは死骸しかないけど」
ボーは私の頭を撫でつつ、訊いてくる。選んでいる余裕は無い程、色々と切羽づまっているのは確かだ。
「ジャック、ワイアットっていうファミリーネーム。あげるよ」
「本当かい？わあ、嬉しいなっ」
人はどんな形であれ、進んで行く。こうして、私は人類の為に動く為に決めた日だ。
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さとうみさん - ラムネサイダーさん» ありがとうございます！今さらご返信なんて、とんでもないことをしていますが同士様がいらっしゃるとは！嬉しい限りです！またいつかLISAは短編でどこかで書こうと思っておりますので、そのときはよろしくおねがいします！ (2020年9月20日 22時) (
レス) id: 3ed32e075b (このIDを非表示/違反報告)
ラムネサイダー - ジャックとボーが大好きなので最高です。 (2020年8月19日 21時) (レス) id: 36b99241c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さとうみさん | 作成日時：2020年4月24日 23時
