検索窓
今日:7 hit、昨日:30 hit、合計:3,745 hit

盲目だったと気付かされる日 ページ36

素早い動きで大きなミュータントを見て目を丸くしている間にも、ボーは私の手首を掴んで避けさせてくれた。
その状態に気付いて、ボーにお礼を言おうとしたが「あれを倒さなきゃダメだよ、俺たちが先に殺される!」と必死な声で伝えてきた。
それを聞いて、彼と私の置かれている光景が命に関わるものだと脳がひしひしと危険信号を受け取っていた。

「……分かった、闘う」

ドラムを前に出して、手記を服の中に入れ込んだ。
そして近付くミュータントを見て、避ける動作をして構えた。長い腕が私の脳天めがけて落ちそうになったが、動作は取れていたので横に避けることができた。
僅かに視界を男の方に向けると、彼は背を向けて逃げている様子が見えた。

「ま、待て!」

ボーがギターを片手に男の方に声を投げていたが、逃げ腰の相手にそれは逆効果で更に逃げ足を速めた。
今度はボーにミュータントの攻撃が飛んでいたので、自分はドラムの最近拾ったステッキをミュータントの頭の方へと投げて気を反らそうとさせた。

「あんたの相手は一人じゃないよ!」

かつんと当たり、ミュータントはこちらに顔を向けた。つるつるの頭が妙に視界に映って、それでも俊敏で死に至りそうな致命的な攻撃を頻繁に行ってくる。
攻撃を当たらないように気を滅入らせる曲や、視界を揺らすようにと悲しい曲をドラムやギターで二人して奏でたり、ボーは近場の大きめの石を投げたり私はドラムのもう片方のステッキで突き刺したりとかなり猟奇的なことをして、ダメージをくらわせていた。

「あんたら、平気か」
「ごめん、手こずっちゃった!」

ミュータントととの戦闘中に、ジャックとバディがやって来て加勢してくれた。
こうなればこっちのもんで、火力に押されてあっという間に倒れていった。

「あいつはどこだ!」
「あっちに行った、今ならまだ間に合うかもしれないから!」

バディに男の道のりを教えて、彼女はそちらに思い切り走っていった。
それを見届けて、突如身体を襲う疲労にふらりと視界が揺れる。
踏みとどまって立っていると、ボーは私の肩を優しく掴んでぎゅっと抱き寄せてくれた。

「大丈夫、疲れたならたくさん寝ても良いよ。今の君はたくさん頑張った……だから当然のことだよ」

彼は私の頭を優しく撫でて、それが暖かくて酷く安心してくる。同時に眠気が押し寄せてきて、それを甘受していると瞼が重くなってきていた。

(最初で最後の会話)→←目の前を見据えた日



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.9/10 (11 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
設定タグ:LISA
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

さとうみさん - ラムネサイダーさん» ありがとうございます!今さらご返信なんて、とんでもないことをしていますが同士様がいらっしゃるとは!嬉しい限りです!またいつかLISAは短編でどこかで書こうと思っておりますので、そのときはよろしくおねがいします! (2020年9月20日 22時) (レス) id: 3ed32e075b (このIDを非表示/違反報告)
ラムネサイダー - ジャックとボーが大好きなので最高です。 (2020年8月19日 21時) (レス) id: 36b99241c0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:さとうみさん | 作成日時:2020年4月24日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。