自分のことが憎く思った日 ページ19
乾いた服でデビルズバスハウスから出た頃には、すっかり日が暮れていた。
ブラッドムーンマウンテンの方へ向かった二手に別れた本筋のブラッドたちが帰って来る気配が無かった。木を切り倒して丸太を持ち運ぶので、それは無理も無いだろう。
「帰って来るの遅いみたいだ、ここで寝るか」
「そうだな。しかし、ここで寝れば誰が拐われるか分からない……」
「見張りを付けよう！そうすれば良いじゃないのかい？」
「それは良い。誰が起きているか？」
焚火の前でそんなやり取りをしていると、ボーが小さく手を上げた。
「じゃあ、俺が起きているよ」
「！……！！」
ボーもするのなら、自分もしなければと謎の使命感に駆られる。そして自分も懸命に腕を上げて、表明をする。
ボーは少し驚いた様な雰囲気を出していたが、他の周りの人たちは頷いていて了承していた。
「じゃあ、僕もして良いかい？一番の僕の良き友と話したいことがあるんだ！」
「お前がルーカスを気に入っていることは分かるが、見張りは二人で十分だ。ちゃんと寝るんだ、さっき闘っただろ」
オランが張り切る様子のジャックに制止をかけた。「えー……最近、彼と話しがまともに出来てないのに……」と言っていた。
私自身、この旅に出てからは一言も喋ったことはないのだが。
「皆、おやすみ。しっかり疲れを取ってくれ」
ボーは焚火の傍で眠る数名の仲間たちに眠りの前の挨拶を投げかける。
それを聞いた彼らは返事をする者もいれば、返事を返さずに眠りこけている者もいると様々だ。
ボーと二人で、焚火を眺めつつ周りの暗い風景に警戒の眼差しを向けた。
*
「A」
「……なあに、ボー？」
あれから数時間、眠たくてうとうととしていた頃。制するように、ボーに小声で私の名前を呼ばれる。
ハッとなって目を丸くし、同じく小声で返答する。
「Aはこの旅路をどう思っているのかい？」
「色んな光景が見れて面白いって思ってるよ」
なるべく明るい声色で答えると、彼は「そう……」と複雑そうな声で答えた。
「来て良かったって思ってる。自分以外にも女の子がいるみたいで、この世界にも光はあるんだなって……」
旅路に見た少女のポスターを見て、自分以外にも光はあるのだと認識出来た。
それだけでも収穫はあるが、メインは義兄のヘンリーの散策だ。
「君もいずれ、母親になるか……男の中でバレずに俺たちと生きるか……決めなきゃいけない」
自分の性別をこんなに憎く思ったのは、今回で何度目のことだろうか。
無力な私は頷くことしか出来なかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さとうみさん - ラムネサイダーさん» ありがとうございます！今さらご返信なんて、とんでもないことをしていますが同士様がいらっしゃるとは！嬉しい限りです！またいつかLISAは短編でどこかで書こうと思っておりますので、そのときはよろしくおねがいします！ (2020年9月20日 22時) (
レス) id: 3ed32e075b (このIDを非表示/違反報告)
ラムネサイダー - ジャックとボーが大好きなので最高です。 (2020年8月19日 21時) (レス) id: 36b99241c0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さとうみさん | 作成日時：2020年4月24日 23時
