縁結びの縁切りさん【地縛少年花子くん】 (ページ8)

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暫くして、寧々が戻ってきた。

醤油が入っている魚みたいな物を首にぶら下げて。

「寧々、それどうしたの」

「こっ、これは〜･･･その･･･」

幸い、周りに人が少なく、葵もいなかったお陰で割とすんなり話してくれた。
にしても人魚の眷属、ね。

「それってさ･･･人魚の呪いとの縁が原因なんだよね」

「うん。そうよ」

「ならさぁ」

私は左手でピースを作り、指を鋏のように動かした。

「切ってあげようか？その呪いとの縁」

「えっ！？」

寧々は一瞬目を輝かせたが、直ぐに気まずそうな顔になった。
頭にはてなを浮かべていると、寧々が言う。

「切っちゃったら、花子くんや凪とも関われなくなっちゃうし･･･今は良いかな！土籠先生にも相談してみる！」

「･･････そ？なら良いよ。何かあったら、また相談して」

そう言うと寧々は、うん！と元気な返事をして去っていった。
振っていた手を降ろすと、いつの間にか隣に狐姿のヤコ姐がいた。

「アンタ、言わなくて良かったの？」

「･･･何が？」

「とぼけるんじゃないわよ。知らないとは言わせないわよ。

あの娘、寿命がもう無いんでしょ？」

ゆっくりとヤコ姐の方を向いた。そして、微笑を浮かべて言う。

「寧々はねぇ、この世を楽しんでる。生前の私と違ってね。流石にそんな人間に死期か近い事を教えるつもりはないよ」

「･･･アンタは生きてる頃から見てたけど･･･何でアンタはそうも死に固執するのよ。若い子が考えるような思考じゃないわ」

「異端児で結構。寧ろそんなの愚問でしょ。

生きるって行為自体に価値を見出せなかったから。ただそれだけ。そもそも死にたいと思う事に理由なんている？今世は生きるのに向いてなかった。それで良いじゃん」

私の答えにヤコ姐は溜息を吐いた。

「それは･･･弟を巻き込んででも(・・・・・・・・・)、やりたかったことなのかしら」

「ヤコ姐は知りたがりだね。そんなに気になるのなら土籠先生の所にでも行ったらどう？先生には全部話してあるから」

私がそう言えば、ヤコ姐は黙ってまま消えていった。

やけに青く澄み切った空を見ながら、さっきのヤコ姐の言葉を思い出す。

＿＿＿弟を巻き込んででも、やりたかったことなのかしら＿＿＿＿

目を細め、口にする。

「･･････ンなわけないじゃん」

そんな独り言は空に虚しく消え、私は次の授業の教材を取り出した。