縁結びの縁切りさん【地縛少年花子くん】 (ページ3)

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【ドーナツ】ページ3

side凪

ある日、屋上の手摺に腰掛けて中庭の様子を見ていると、ついこの間見かけた柚木の助手、八尋寧々を見かけた。なんだか凄い勢いで畑の草刈りをしている。

ストレス発散･･･？と少し引き気味に様子を伺っていると、隣に金髪の、エプロンをした男の子が現れた。

「源光じゃん。確か詩音と同じクラスだっけ」

なんか、面白いことになりそう。と思い、口角が上がる。すかさず裁ち鋏を取り出して｢自分｣と｢重力｣との縁を切った。
パチンッと軽快な音がする。

瞬間、身体がフワッと宙に浮いた。
そのまま下の方まで降りていき、地面に足が着いたところで再度縁を手首に巻き付ける。勿論後で詩音に結び直して貰うつもりだ。

次に、｢生(せい)｣との縁を手首に巻く。そして解けないようにきつく結んだ。
その瞬間、私の姿は今のかもめ学園の制服になり、生者にも見えるようになった。

「なぁにしてんの？ネネ」

「わぁっ！？」

後ろから話しかけると大きな声を出して驚く寧々。私はクスクスと笑った。

「凪！帰ったんじゃなかったの？」

「忘れ物しちゃってさぁ。戻ってきた」

完璧に私を人間だと思い込み、騙されている寧々が可笑しくてずっと口角が上がりっぱなしだ。

「あ、君。詩音の友達でしょ」

源光の方を向いて話しかける。此方も私の正体には気付いていないみたいだった。やっぱり警戒すべきは兄の方か。

「私、縁霊凪。詩音の姉です。いつも弟がお世話になってるね」

「あ、いえ！此方こそお世話になってます！」

根っからのいい子って感じだな。大きな声でぺこりと礼をする源光にそう思う。本当に祓い屋かどうか疑うレベルだ。

「あ、そろそろトイレ掃除の時間？呼びに来てくれたの？」

思い出したように寧々が源光に聞いた。

「あー、ちょっと先輩に頼みが･･･」

「頼み？」

寧々が不思議そうに首を傾げた。
私も源少年の話に耳を傾ける。

「先輩、ドーナツ作れますか？」

間があって、現在家庭科室へ来ている。
そんなことはどうでもいいが、私と寧々は今目の前の光景に絶句している。

「いや〜先輩達が料理上手でマジ助かったッス！さっきまで兄ちゃんとやってたんすけど、オレ料理苦手で。ちょっと失敗しちまって！」

「"ちょっと"･･･？」

目の前には地獄と言っても過言ではない光景があった。