縁結びの縁切りさん【地縛少年花子くん】 (ページ17)

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その声の正体は司先輩だった。司先輩は、柚木先輩の顔を見てぱあっと顔を明るくしている。

「あまねだー！何年ぶりだっけ？じゅう、にじゅう･･･あっ、こないだ屋上で会ったばっかだね！」

一方的に楽しそうに話す司先輩の胸倉を、柚木先輩はガっと掴み、壁に打ち付けた。

「どうしてこんな事を･･･！つかさ!!」

司先輩はんー、と考える。

「俺、スキなんだよね。我慢するのやめた人の顔。

あの時も良かったよ。あまねが俺を殺した時」

その言葉が、心に重く伸し掛る。姉ちゃんは拳をぎゅっと握りしめ、揺れる瞳で司先輩を見ていた。

「スキだよ。あまね。また一緒に遊ぼ？昔みたいに、四人で」

司先輩は、ネ、と言ったかと思えば、黒い煙に包まれて消えた。
源が三葉！とミツバの名前を呼んでいる。ミツバの目は開かれることがない。きっと、これから魂ごと消滅していくのだろう。

「花子･･･なあ、コイツ、戻せるよな･･･？ミサキ階段とかみたいに、元に･･･」

何も言わない柚木先輩を見て、源は全てを悟ったのか、歯を食いしばった。

「三葉！お前は･･･こんな、こんなじゃねぇだろ！オレの知ってるお前は、三葉惣助は･･･な、生意気で、女顔で口が悪くて、わがままでっ、あと･･･あと声がうるせぇし、カメラオタクだし、たまに暗ぇし猫かぶりで」

源の声が段々と掠れ、震えていく。そんな源を見ていられなくて、思わず下を向いて目を逸らした。

「そんでっ･･･そんでオレの友達で･･･!!」

源が、三葉ぁ！と叫んだ。柚木先輩が無駄だよ、と冷静な声で源に言う。

「そんな･･･」

「少年。死は"お終い"なんだ。霊体になって此岸を彷徨ったって、それは生の続きじゃない。死んでしまったらそこが終わりで、それ以上は何もなくて、もう何も始まらない。

どんなに悔やんで願った所で、生きている時できなかった事は、死んでしまったら後にもできないのさ。そういう世界の仕組みに抗うと、こんな風になってしまう。

･･･君なら、彼の未練を･･･この此岸への執着を断ち切ってあげられるかと思ったけど、逆効果だったみたいだね」

柚木先輩は源とミツバの前に立つ。

「ダメだよ。あまり死者に優しくしたら」

ミツバの、穴の空いた空っぽの胸に包丁を突き立て言った。

「だって俺達には･･･もう未来なんて、ないんだから」