縁結びの縁切りさん【地縛少年花子くん】 (ページ16)

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司先輩はくすくすと笑いながらミツバに触れる。

「ミツバの願いは少し曖昧だったんだー。"此岸に残って何をしたいのかわからない" "でもこのまま終わりたくない" "みんなの記憶に残りたい"」

司先輩は少し間を空け、再度話し出す。

「願いが曖昧だと、中途半端な怪異にしかしてあげられない。でも、今は違う。君のおかげだよ」

司先輩は源を見た。源がオレの･･･？と困惑した声で呟く。

「そう。君はミツバの本当の願いを引き出してくれた。願いが･･･未練が強ければ強いほど、怪異はより確かで強力な存在になれる。

ミツバの願いはこう。トモダチが欲しい。トモダチと一緒にいたい。これから先もずっと」

嗚呼、そうか。源と接して、ミツバは憧れたんだ。"トモダチ"という存在に。
バチッと横で音がした。

「な･･･何言ってんだテメェ！ゴチャゴチャ言ってねぇで、三葉を元に戻しやがれ!!」

源の退魔具がバチバチと眩しい光を放つ。

「それに三葉の未練は写真を撮ることじゃ･･･」

「ふーん」

司先輩は興味がなさそうに言うと、ミツバを振り返った。

「そーなの、ミツバ？でもさぁ、多くの人の記憶に残れば、それだけ長くここにいられるよ」

そう言ったかと思えば、何かを思いついたように、あ、そーだ、と声を出す。
そして、源を指差した。

「あの子も君と同じになれば、ずっと一緒にいられるんじゃない？」

『なっ･･･！』

姉ちゃんが、信じられない、と言ったような声をだした。ミツバが微かに反応する。

「大丈夫。何を望んでも、そのために何を傷つけたとしても、俺が全部許してあげる」

司先輩はぴと、とミツバの顔に手を当てた。

「君の願いの代償は"理性"。邪魔なモノはもう何もない。さあ、世界の仕組みに抗って、足掻いてみせてよ。ミツバ」

ミツバがすぅ、と目を開けた。その目が源を捉える。不気味に笑ったかと思えば、直ぐに源を拘束した。

『源！』

姉ちゃんが叫ぶも、ミツバは源を離さない。みしっ、と源の骨が鳴った。本当にマズい。そう思った瞬間、ミツバの身体が真っ二つに斬れた。

そして、現れたのは柚木先輩だった。

「柚木、先輩」

『柚木･･･』

柚木先輩は無言で源の襟首を掴み、倒れたミツバから離れさせる。
源は苦しそう咳き込んでいた。

姉ちゃんが柚木先輩の姿を見て、口を引き結んでいる。オレも姉ちゃんも、何十年ぶりかわからない再開だった。その時、場違いにあー！と嬉しそうな声が響いた。