カッケェ女子【HQ】【夜久衛輔】 (ページ8)

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「やらないって･･･」

『やらないものはやらない。っていうかできないし』

嘘を吐いた。夜久が、まだなにか言いたげに口を開いたが、それを無視して倉庫の方へと向かった。

ボール籠の前まできて、俯く。
バレーボールを見てると、姉ちゃんの顔が脳裏に過ぎる。
そして、あの時の光景も。

ゆっくり瞬きをして、顔を上げる。ボールを籠に戻して体育館へと戻った。

『ほら、夜久。ケータイ出して？交換すんでしょ』

「あ、おう」

夜久が、慌てて鞄から携帯を取り出す。その後直ぐにメアドを交換した。

『おし、OK。じゃあ詳細は後々。バイバイ』

「･･･おー」

手を振れば振り返してくれる夜久。
嘘を吐いた事がなんだか居たたまれなくなって、逃げるように帰路に着いた。

後日。家で勉強していると携帯が震え、メールが来た時の着信音が鳴る。
夜久からだった。

"日曜空いてる"

なんともまぁ簡潔な文章なことで。
苦笑を零し、了解、と此方も簡潔な言葉で返す。

にしても日曜か。

『･･････なぁに着てこっかなぁ･･･』

天井を見ながらそんな事を呟いた。

時が過ぎるのは早いもので、あっという間にデート(仮)の日、当日になった。
服に関しては、夜久には一度見られているし大丈夫か、という事で男装をして行くことにした。

黒のウィッグを被り、簡単なメイクをして黒の帽子を被る。
ちなみに服装は白ティーに黒のジップパーカー。黒のカーゴパンツ。ついでにイヤーカフもつけとく。

ん、これで多分中性的な男子には見える。

『行ってきます』

皆が出掛けていて、誰も居ない家に向かって呟いた。

待ち合わせ場所に行くと、私は軽く呆れることになる。
だってバレー部の人間、ほぼ全員いるんだもの。しかもなんか騒がしいし。

はは、と軽く苦笑した。それからやほ、と声をかける。

『騒がしすぎなんだけど。もう少し落ち着けよー』

「遅せぇよ。羽駒」

「え？」

夜久の言葉に全員が反応した。
皆此方を見て驚いている。ニコッと笑って言った。

『羽駒Aですけど。何か文句でも』

「おっ･･･お前男じゃねぇか！」

ヤンキーみたいな男子が叫ぶ。
私はやれやれ、と頭を振って言い返す。

『男装女子って言葉を知らないのかな、少年よ。あと女子の趣味にいちいち口出す奴はモテねぇぞー』

「随分とハッキリ言うね」

ヤンキー男子は私の言葉が心に突き刺さったのか胸を抑えて泣いていた。