あの夏の日を、俺は忘れない

07 ページ8

涼｢そのクソ親父とはそれで喧嘩別れしてそれっきり。で、その話を聞いてから俺は片割れの弟を探した。けど、見たこともましてや会ったことも無い弟を探すなんて、やっぱり無理だった…｣
瑞稀｢なにか、手がかりは無いの？｣
涼｢あるっちゃ、あるけど。その弟は母親の姓の『井上』になってる。とか、それぐらいで。井上なんてありきたりな苗字だし。名前も。どこに住んでるのかも。そもそも、生きてるのか死んでるのかも分かんねぇんだよ｣
瑞稀｢そう…なんだ…｣
いつも俺の愚痴を嫌な顔1つせず聞いてくれる涼。時にはこうした方がいいんじゃない？なんて言ってアドバイスをしてくれる事も多かった。そんな涼に何か恩返しがしたかった。けど、涼の弟を探すのは無理そうかな。
涼｢それに、一卵性じゃなくて2卵生なんだってさ。だから、顔も性格も似てないらしいんだよ。あ、一つだけあった。手がかり｣
瑞稀｢何？｣
涼｢弟の方は昔身体が弱かったんだって。で、何度か手術してるらしいんだよ。だから、胸に手術の痕が残ってるって言ってたけど｣
瑞稀｢胸に、手術の痕…｣
涼｢でも、もうそれも諦めてっから。瑞稀もそんな悩むなって。ほら、もう瑞稀も家帰って寝ろよ。明日も仕事なんだろ？｣
瑞稀｢うん。まぁ、そうだけど｣
涼｢じゃあ、もう帰った帰った。仕事、サボんじゃねーぞ〜｣

08→←06

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す