やり直せるのなら。【名探偵コナン】

23 ページ24

ASide





松「くそっ、なんでだ！？」


降「もう一回！勝つまでやってやる！」



『お財布と相談したほうがいいんしゃない？』




二人にぼろ勝ちして優越感に浸る。


かれこれもう五回はやっているのだ。


萩原なんて負ける二人を見て爆笑している。


諸伏と伊達は隣のクレーンゲームに夢中。


財布の小銭を鳴らせながら百円玉を探している二人。


ふと私は妙な人影を見つけた。





『っ……………！！』





長い金髪、美しい顔立ち。


凛とした姿はひと目で誰もを魅了する。


その瞳は帽子で隠れている。






『……………ベルモット？』






まさか、ね。


でもありえる。


なんて馬鹿なんだろう、油断していた。


降谷と諸伏が公安になって、組織に潜入するまで接触はないと思っていた。


いつでも接触の可能性はあるのに。






『………………』


松「おい、どうした？」






咄嗟に松田の影に隠れる。


奴らはまだ知らない、私達のことを。


わかっているのに体が震える。


震えを止めようと松田の服の袖を掴む。


強いほどに。









彼女に気を引かれすぎていた。








だから、見逃した。









降「っ！伏せろ！！！」







降谷の叫びに反応が遅れる。


松田が私を引き寄せ、上に覆いかぶさるのがわかった。


悲鳴と銃声が響く。


クレーンゲームのガラスが割れる音がした。


伊達は？諸伏は無事？


ここで失ってたまるか。






『今の状況は？』


松「五人の男が銃を乱射してる」


萩「今は動かないほうがいい、ガラスが散乱していて危ない」






今もなお銃声は響いている。


断続的に耳をつんざく悲鳴。


ああ、気分が悪い。


昔を思い出す、あの時を思い出す。






松「A……………？」





止まれ、止まれ、止まれ。


震えが止まらない。


思い出すな、目の前のことにだけ集中しろ。






『っ………………あ……………』


松「落ち着け、A」


『わかってる』





深く息を吸い込む。


その時、銃声が止まる。






「動くな！動いたら撃ち殺す！」


「このゲームセンターのシャッターを降ろせ」






一人の男が警備員に銃を突きつけた。


おそらくは立てこもる気だろう。






「他の奴は手を頭の上に上げろ！携帯を差し出せ。下手なまねはするなよ？」








何人かが怯えながら立ち上がるのが見える。


その中に伊達と諸伏もいた。


ほっとため息を溢す。

24→←22

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す