檸檬色の君【アンナチュラル】 (ページ9)

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初日は飛ぶように時間が過ぎ、あっという間に夕方になってしまう。

私はパソコンに向かっていた。

「それじゃあお先でーす」

東海林さんがいち早く仕事を終わらせ、帰っていく。

それに続くように三澄さんと久部くんも帰っていった。

残されたのは私と中堂さん。

よりによって何故彼なのか。

「………………」

中堂さんはまったく帰る気配はない。

今日のお昼もカップラーメンだった。

一体どんな食生活を送っているのだろう。

「…………お前は帰らないのか」

『か、帰りません』

いきなり声をかけられて、少し声が裏返る。

『…………やりたいことがあるので』

私は再びパソコンにむきなおった。

中堂さんも下手に検索はしてこない。

静かな部屋にキーを打つ音だけが響く。

「アダルトチルドレン、過去のトラウマ。大人になってから障害の可能性」

『え、』

「幼少期に虐待やアルコール依存の親に育てられた、事故で親を亡くす、過保護に育てられすぎるなどの機能不全家庭で育った子供は大人になってからの人間関係の不得意などの影響を及ぼす」

『や、やめてください！』

いつの間にか後ろに立っていた中堂さん。

私のパソコンの画面に表情された記事を読み上げていく。

叫んだ私はパソコンを閉じた。

「お前、アダルトチルドレンなのか？」

『……………違いますよ』

心の底が冷たくなる。

私は、アダルトチルドレンなんかではない。

現に人間関係に劣等感は抱いていないし、

引きこもるなんてこともない。

「…………………」

『なんですか。あなたは何が言いたいんですか！？』

思わず声を張り上げる。

何なんだ。

何で黙る、何で私に構う？

「何を隠しているんだ？」

『っ……………………………』

そう、ずっと隠してきた。

心の奥にあいた大きな穴を。

それを他人に見せないよう。

穢れた自分を見せないでいようと決めたのだ。

『隠してなんかいない。あんたに私のことは理解できない。だからかかわらないで』

これは拒絶だ。

私は独りで生きていく。