【アルスマグナ】 Train 2【泉奏】 (ページ26)

今日:9 hit、昨日:0 hit、合計:69,062 hit

story 73 ページ26

私に何か言う泉くんをよそに、私は靴を履き替えた。

廊下を少し歩き、階段を上る。

なんだか今日は階段が長く感じる。

そう思いながら、一段一段上がっていく。

あと少しで階段が終わる。

そんな時、足を踏み込んだ瞬間に立ちくらみがした。

手すりにつかまって倒れないようにする。

周りを見ると、誰もいなかった。

……はずだった。

泉「寝不足ってだけでそんなことにはなりませんよね？何かおかしいと思って付いてきたら……やっぱり風邪かなんかなんじゃないんですか？」

泉くんが私の一段下に腕を組んで立っていた。

「……本当に大丈夫だよ」

私は、心配をかけたくなかったがために、笑って見せた。

泉「あなたって人は……無理をしている時はいつも不自然な笑顔を見せる。そしてその場を立ち去ろうとする」

泉くんは階段を少し上り、私の前に立った。

泉「どうしますか？このまま教室に向かうか、階段を下りて保健室へ向かうか」

優しく問いかけてくれる泉くんは、親そのものと言っていいほどだ。

私は重い口を開き、みんなに心配をかけない方を選択した。

「……教室に向かう」

私がそう言うと、泉くんが呆れたように溜息をついた。

泉「それで心配かからないとでも思ってるんですか？このまま教室に向かったら、余計心配かけるに決まってるじゃないですか」

泉くんがピシャリと言い放った。

そっか……もしも教室で倒れたりなんかしたら、余計みんなに心配かけちゃうんだよね。

でも……

「でも、勉強追いつかなくなるし、もっとみんなといたいし……」

私が拗ねたようにそう言うと、泉くんは私に少し近づいて、私の頭の上に手をポンと置いた。

泉「勉強なんていつでも教えてあげられます。皆さんだって、どこへ逃げたりはしませんよ」

泉くんは優しく微笑みながらそう言った。

泉くんのそんな言葉や態度が嬉しかった。

なんだろう、泉くんの一つ一つの動作に胸が軽く締め付けられるような。

でもその締め付けは、決して痛いものじゃない。

締め付けられれば締め付けられるほど、心臓の鼓動が早くなる。

泉「……どうしたんですか？」

「……えっ？」

泉「いや……何かボーッとしていたので」

ついついボーッとしてしまった。

私は咄嗟の笑顔を見せ、手をヒラヒラと振った。

「じゃあ私、ソソコ先生のところへ行くね。今日も1日頑張ってね」

私はそう言いながら階段を下りようとした。

すると、泉くんに腕を引かれた。