32話 ページ33
泣きやみ、落ち着いた私を確認すると、善逸は、仕事用の部屋からギターを持ってきた。
そして、息を整えて、歌った。
「〜♪」
変わらない、綺麗な歌声だ。
まぁ、今世で聞きあきるほど聞いている歌声なんだけど。
だけど、今世で流行っているようなリズムではない。大正で流行った歌のリズムなどで出来ている。
特に最初の方が。後半になると、少しずつ今どきのように変わっていく。
そして、歌詞。
男目線の失恋し、また恋をするという歌詞だった。
「…どうだった?」
最後まで歌い、ギターを弾き終わり、少し緊張した顔で聞く。
『うん……とってもよかった。ありがとう』
「ほんとっ?」
『本当だよ。善逸さんと善逸の気持ちがよく伝わった。』
「うっ…」
恥ずかしそうに善逸は目を泳がした。
「もう気付いてると思うけど、前半は大正の俺が作って後半は今の俺が作った。言っとくけど、この曲だけは本当に誰にも聞かせてないんだからな!本当は、Aにはこの時代に合う曲を作って聞いてもらおうと思っていたんだ。それがデビュー曲なんだけど、あの派手野郎に聞かれて…」
『確かに、善逸のデビュー曲も好きだよ。でも、私はこの曲の方が好き。もう、あの頃の約束なんて忘れられてるか、作る気なんかないと思ってたから』
「忘れるわけないだろ!Aとの大事な約束だったんだから。」
『善逸…』
善逸は私よりも長生きしていたはずだから、私のことは最悪覚えていてもあんな1度だけした会話を何十年も覚えていないと思っていた。
だから、本当に嬉しかった。
「あと、渡したいものがあるんだ。」
そう言って善逸が取り出した箱は長方形型の木箱だった。
木箱の中を開けると、黄色を中心とし、三角の飾りのついた簪だった。
とても、とても綺麗だった。
『……ね、ねぇ、どう?気に入った?』
そわそわしている善逸に気づかないほど、その簪に見とれていた。
『…これどうしたの?』
「炭治郎の伝手に頼んで再現してもらったんだ。」
『再現…?』
「昔、Aに聞いたでしょ?好きな色とデザイン。それを作ってもらって、やっと完成して、Aにって思ってたのに、渡す前に逝ってしまうんだから…」
聞かれたのは、大正……
渡す前って…それって……
「あれは渡せず俺が死んだ時に一緒に燃やしてしまったから、燃やすように頼んだ唯一中身を知っていて、知り合いの多い炭治郎に頼んだんだよ。」
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myu♪(プロフ) - Decemberさん» ありがとうございます!とっても嬉しいです!友達にこうなったらどう思うかなど聞いたりして、感情表現が分かりやすくできるよう頑張ったのでそう言ってもらえて本当に嬉しいです! (2020年2月20日 10時) (レス) id: 875cd6e9ff (このIDを非表示/違反報告)
myu♪(プロフ) - スヴィエトゥさん» コメントありがとうございます!嬉しいです! (2020年2月20日 10時) (レス) id: 875cd6e9ff (このIDを非表示/違反報告)
December(プロフ) - このお話の設定めっちゃ素敵ですね(;_;)主人公に感情移入しやすくて、とても、面白かったです!素敵な作品ありがとうございます!! (2020年2月19日 22時) (レス) id: 8a83f8152c (このIDを非表示/違反報告)
スヴィエトゥ(プロフ) - 面白かったです (2020年2月19日 21時) (レス) id: f033e98427 (このIDを非表示/違反報告)
myu♪(プロフ) - 人形師さん» ありがとうございます!頑張ります! (2020年2月16日 13時) (レス) id: 875cd6e9ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:me | 作成日時:2020年1月29日 0時