泣きながら謝る様は、まるで幼児 ページ28
「(泣き声……?)」
医務室の扉の外。クロウリーは一人で立っていた。
件の喧嘩沙汰の当人であるA・ストロンボリに面会に来たのだ。
大体の生徒たちは各寮で夕食を取っている頃合いで、廊下はしんと静まり返っていた。
そんな状況下なので、部屋の中の物音もある程度は聞こえてしまう。
声を殺すような嗚咽ではなく、まるで幼い子供が感情のままに涙を流すように、
部屋の中からはおおよそハイスクールの生徒らしからぬ泣き声が聞こえてきた。
「……はぁ。」
足を運びはしたものの、依然としてAにどう声をかけるか、どう話を聞こうか、
最初の一言めすら準備ができずにいた。
言い訳を並べ立てるのか、素直に謝るのか、あるいは、こちらにも攻撃を仕掛けてくるのか。
相手の反応も気になるところだ。
「…兎にも角にも、虎穴に入らずんばなんとやらですね。」
意を決して扉を開ける。
先ほど扉の向こうから聞こえていた音から想像していた光景がまるっきりそこにあった。
ピースを抱きしめながら大声をあげて泣くAが、ベッドの上にいたのだ。
「!!!」
医務室に入って来たクロウリーの姿を見るなり、
Aはベッドから滑り落ちるように床に這いつくばった。
その不気味な行動に、クロウリーも言葉を失う。
「せ、せんせい!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「…っ!?」
「ごめんなさい、僕は「悪い子」です!!でも、打たないでください!!
もう痛いのも、お腹が空いて動けなくなるのも嫌です!!
もうあの「家」には帰りたくないです!!
ここにいたいです!ここでいろんなことを勉強したいです!!
だから、お願いです!許してください!ごめんなさい!ごめんなさい!!!」
「……」
医務室に入るまでは、Aにどう声を掛けようか、
どう話を聞こうかと思案に暮れていたクロウリーだったが
あまりの勢いに脳内に積み上げていた言葉がすべて崩れたようだった。
あふれ出る涙も鼻水も、感情のままに垂れ流し、
クロウリーの足元に縋りつくように許しを請う姿。
到底演技とは思えないその様は、本当に幼く、無知で純粋な子供のようだった。
嗚呼、彼は…その手で林檎を取ったのだと、クロウリーは思った。
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白樺葵(プロフ) - 狂歌さん» 狂歌さん!コメントありがとうございます!ね、なにやら雲行き怪しくなってきました……カタ((((〇△〇))))カタこれからどうなっていくんだろう……私も分かりません← (2021年7月8日 10時) (レス) id: 30555c691c (このIDを非表示/違反報告)
白樺葵(プロフ) - マルさん» マルさん!コメントありがとうございます!えぇ、遅くなりましたがようやっと本編主人公君の登場です(汗)更新頑張ります!ありがとうございます! (2021年7月8日 10時) (レス) id: 30555c691c (このIDを非表示/違反報告)
狂歌 - ヤバいピース何があった…?!不穏な感じしゅき(((全然ピース(平和)な感じがしない!めちゃんこ楽しみですッッッッッ!! (2021年7月7日 23時) (レス) id: ba521741cf (このIDを非表示/違反報告)
マル(プロフ) - わっやっとユウくん出てきた〜!続きがきになる〜!更新がんばってください!!応援してます!!! (2021年7月7日 22時) (レス) id: 92b1393144 (このIDを非表示/違反報告)
白樺葵(プロフ) - いよさん» いよさん!コメントありがとうございます!シンプルに嬉しいです!!書き始めた当初はこんなに反響があるとは思わず、軽い気持ちで書き始めたんです(汗)筆者含めて続きがどうなるのか分からないミステリーツアーですが、お付き合いいただければ幸いです(T_T) (2021年7月6日 20時) (レス) id: 30555c691c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白樺葵 | 作成日時:2021年5月19日 11時