【ツイステ】人形使いのお話

林檎か、コインか ページ26

「…今は、鎮静剤を打って眠ってもらっています。不思議なことに、ストロンボリくんが
　眠りにつくと、あれほど暴れていたピースくんも糸が切れた人形のようにぐったりと動かなくなりました。
　今は二人とも保健室にいます。」
「…ケンカの原因は何だったのか、わかっているんですか？」
「一部始終を見ていた生徒がいたわけではないそうですが、近くにいた生徒たちの話をつなぎ合わせると、
　よそ見をしてサバナクロー寮生にぶつかったストロンボリくんに難癖をつけて
　サバナクロー寮生が最初に手を出した、と。」
「…そうですか。」
「…とはいえ、明らかに過剰防衛です。サバナクロー寮生は目をひっかかれ、鼻を齧られ、
　顎えぐられ、鳩尾にも痣がありました。」
「…すべて急所ですね……」
「…それを知ってやったのか、どうなのかは、本人に聞いてみなければなりませんが…
　いえ、そんなことより、この一件をどう処理するかです。」
「当然退学処分でしょう！先に手を出したのはサバナクロー寮生のほうだったとしても、
　彼がやった行為は完全に常軌を逸しています！！」
「普通に考えればそうでしょう。しかし、彼はつい先日まで何も知らない赤ん坊のようなものでした。
　善悪も常識も、マナー以前のモラルに関しても…
　彼を、16歳の少年として裁くべきなのか、あるいは、譲歩すべきなのか、私は悩んでいるのです。」
「……」
「……」


クロウリーが何に頭を悩ませているかはリドルにはわかっていた。

天井を仰いだクロウリーがぽつりとつぶやいた。


「林檎か、コインか……」
「…何ですって？」
「…聞いたことはありませんか？こんな話があるんです。
　ある村で、まだ幼い少年が故意ではないものの、人を殺してしまった。
　村人たちは、彼を死罪にすべきか否かで話し合った。
　そして、ある提案が採用されたのです。すなわち、
　少年に林檎とコインを見せて、どちらを取るかを見ようと。
　コインを取れば、善悪の判断ができる大人と判断し、彼を死罪に、
　一方林檎を取れば、まだ何もわかっていない子供と判断し、彼を無罪にしようと。」
「…それで、その少年はどちらを選んだんです？」
「彼は喜んで林檎を選び、その場で食べてしまったそうです。
　結局彼は子供だということになり、人殺しの罪はなかったことになったそうです。」
「…彼は、どちらを選ぶのでしょうね……」
「……」

僕、どうなったの？→←校長室にて。

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