マイ探偵

十九話 ページ24

男の子は、打ち所が良かったのか、頭を数針縫う怪我だけだったらしい。

とりあえず頭蓋骨が割れていないようで安心した。

しかし、気になる点がひとつあった。
それは、彼の点滴の量。

怪我は頭だけなのに、どうしてそんなに点滴を打つのだろう。

すると、医者は答えた。

「この子、栄養失調が見られたので」

栄養失調。

何故栄養失調になってしまったのか。

その理由として挙げられるのは、一つ、親からの虐待。

２つ、家が貧乏。

三つ、育ててくれる親がいない。

この中のどれかだ。

2つ目が一番妥当な線だろう。

確かに、彼をおんぶしてみて一番最初に“軽い”という感想が出てきた。

彼は一体今までどのような生活をしてきたのだろう。

平凡である程度幸せな生活を送ってきた俺には皆目見当もつかないが、きっと、ずっと辛かったのだろう。

安らかな顔ですやすやと眠る男の子の頬に触れる。

すべすべしていて気持ち良かった。

ふと、彼の口元が歪んだ気がした。

それが気のせいだったのかどうかは定かではないが、その時、彼の指がぴくりと動いたのだ。

「お父さん…この子の指が動いた…」

「まじかよ」

「まじだよ」

「なら、目を覚ますのも時間の問題…だな…」

「うん」

そして、お父さんはえらいえらいとでも言うように俺の頭を撫でた。

俺は恥ずかしかったが、少し誇らしい気分になった。

俺が小さい頃、川で溺れて死にそうなところを助けてくれたあの中学生のように、こうして誰かを助けることが出来たのが、とても嬉しかった。

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