【d!】袖すりあうも他生の縁【企画】 (ページ27)

今日:16 hit、昨日:5 hit、合計:26,838 hit

『終わらないで今日』(syp) 有馬ページ27

.

いいとこのお嬢さんだった彼女は父親が他界してうちに来た。

第一印象は良くも悪くもなかった。
ただただ、作り物のように笑う子やなって思った。

“いいとこのお嬢さん”と言うと箱入り娘で高飛車なイメージがあるのに対して彼女はどこか達観していて、物怖じしてないはずなのに怯えているような、ちょっと曖昧な感じだ。

しばらく一緒に過ごしてみて思ったことは、俺が言うのもなんだけど全体的に覇気がない。
もしかしたら生きるのを諦めてるのかもしれないとも思ったことさえある。

父が亡くなり身寄りのなくなった彼女だからこそそういう風になってしまったのかとも思ったけどそうでもないらしい。
それが彼女の本質なのだろうと見て取れた。

彼女は自分のことは何も語らない。

気を利かせたのか組の者が彼女に色々質問していたが彼女は曖昧に答えて流すだけで多くは語らなかった。

おかげで約半年、一緒に暮らしていても彼女の事は何もわからないままだった。

…それでも、時々見せる彼女の人間味を帯びた表情には何か揺さぶられるものがあった。
それが何なのかはよくわからないが、多分物珍しさからなのかもしれない。

誰に何を言われようが拒否することなく、首を縦に振りそれに従う。
彼女が少しでも嫌そうな表情を見せたことはあったやろうか…。

……あったな。