BETWEEN II (ページ10)

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「失礼致します」

『あ、あぁ…ありがとうございます』

タイミングよく水を運びに来てくれたウェイトレスさんのおかげでなんとか平常心は取り戻せたけど、手先はまだドクドクと熱くて変な気分だ。

一礼して去っていったウェイトレスさんにまだ行かないでと目で訴えても、背を向けられたら届くわけがない。

まだ料理すら頼んでないのに逃げ道のないこの微妙な雰囲気、どう乗り越えればいいの。

セジョン大先生、助けてっ…！

「おもてなし、してくれるんじゃないの」

『えっ、あ、そ、そうですね…おもてなし…』

手汗ダラッダラの手を気付かれないようにスカートで拭いて、メニュー表を先輩に差し出すと、ありがとうと一言だけ言ってそれを眺め始めた。

まただ。
先輩は何も無かったかのように振る舞ってる。

自分で人のこと綺麗だとか言っておいてその落ち着きようは何なの！？

先輩が何を考えてるのか全く分からない。

落ち着かないこの気持ちをなんとかしよう。そう思って顔を横に向け夜景を眺めていると、鞄に入れていた携帯から通知音が鳴った。確認するとオセフンから"食事、終わりましたか？"とメッセージが来ていた。

"全然まだ。これから注文するところ"

"何もされてませんよね？心配です"

"彼氏面やめてくれる？"

オセフンには、今日の夜先輩と食べに行くことを事前に伝えてあるから(彼が無理やり義務にした)お迎えは無い。ぶつぶつ文句やら言ってたけど会社の人だから仕方ないって説得させた。

"どんな状況か知りませんけど今電話かけますね。絶対出てください"

『えっ』

「ん？どうかしたの」

『いや、電話するから絶対出ろって知り合いから連絡来てて』

「急用なんじゃない？出てきなよ」

『…すみません。失礼します』

この会話をする前から既に鳴り始めていた携帯を握ってとりあえずお手洗いに駆け込んだ。

『…もしもし』

「遅いです。何分待ったと思ってるんですか」

『1分も経ってないでしょ。そんな怒りっぽいと早死するよ』

「ヌナと結婚するなら早死はしません」

結婚、って…

まだ付き合ってもないわ！

何となくオセフンと結婚した自分を想像してみたけど全くピンとこないし、それに、彼は元はストーカー。助けてもらったことはあってもそんな人とどうこうなるなんて考えられない。