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「一緒に帰れない…？なんで」
『残業なの』
「どうして分かるんですか」
『社会人2年目の勘ってやつ』
「本当に残業？」
『ヌナのこと信じなさーい。あ、お風呂入った？」
「…まだですけど」
『じゃあ入ってきな。ほいほい』
「……」
彼が浴室へと消えていったのを確認して。
ふぅー、と安堵のため息が漏れる。
飲み会という名の相談会から帰宅すると、家主のようにくつろぎながらテレビを見ていたセフン。明日は一緒に帰れないということを早速伝えると予想通り怪しまれた。
確かに、まだ明日にもなってないのに残業確定してます！っていうのはおかしいけど、全ては3日後に迫った君の誕生日のためなんだ。深掘りはしないでよ。
紅茶を飲もうと思って棚に手を伸ばす。すると、むわんとした熱気を感じたと同時に後ろから腕が回ってきた。首元にはポタポタと水が落ちてきて、彼がタオルドライもせずにここに来たことが分かる。
…それに加えて多分この人、服、着てない。
『あのー？ちゃんと服は着ましょうね？』
「どうせ脱ぐことになるからいいんです」
『…せめて髪は乾かすとかさ』
「ヌナに乾かしてもらいます」
『でも私は紅茶が飲みた…』
「え、僕紅茶に負けたんですか？超ショック」
そう言って肩に顔を埋めてきたせいで彼の髪からぽたぽたと水滴が落ちる度につーっと身体に伝って。
『ごめんごめん紅茶より断然セフンの方が好きだよ』
「じゃあ早く。乾かして」
『その前に服を着ようね。髪もちゃんと拭いてきて』
「はーい」
ぺたぺたと姿を消した彼の細いくせに逞しい背中を見てまたため息が漏れた。
スキンシップは多い方だけど、慣れないものは慣れない。
私にはハードルが高すぎる。
戻ってきたセフンを床に座らせて髪をわさわさ乾かしていると、結構序盤で首が傾きだして。その頭を支えるように、ソファに座っていた私は胡座を崩して彼の肩を跨ぐように脚を下ろした。
『…よし』
カチッとドライヤーを止めてぐっすり夢の世界へと旅立っている彼のつむじにちゅっと軽く触れる。そうすれば、んん…と声を漏らして起きた。あんたは姫か、白雪姫か。
『ほらー寝るよ』
「運んで…」
『置いてくね』
運んであげたい気持ちはやまやまなんだけど、成人男性を運べる力は持ってないので。
もう一度あっちの世界へと行ってしまった彼を置いてベッドに潜る。いつ移動してきたのか、朝起きたら彼は隣で寝ていた。
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作者名：mi | 作成日時：2020年1月5日 23時
