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『ん〜海だー！風が気持ち良いね』
「……(隠し撮り中)」
次に連れて行ってもらったのは、コテージとレストランが合体したようなところで、海を見ながら食事が出来るという素敵な場所だった。
笑顔が可愛いおばさまが出迎えてくれて、寒いけど絶景なんだよと海が一望出来るデッキに案内してもらった。日が落ちたこともあって勿論寒さは感じるけど、この景色ならチャラだね。
いつか海に近い場所に家を建てたいなーって小さいころから思ってたから、今その擬似体験をしてるような気分で。オセフンに感謝する日が来るとは思わなかったけど、今日は感謝したい。
『…ありがとうね』
感謝したいその相手は食べることに夢中で私の言葉なんて聞こえていない。
まあいいの、こういうの照れ臭いし。
時間が経ってお腹が満たされて、耳を澄ませて海の音を聴いていたら。
「ヌナ」
『…ん？』
オセフンに呼ばれて反射的に彼の方を見ると、彼の手に四角い革の箱があるのが見えて。
「ヌナに似合うと思って用意してきました。ささやかなプレゼントです」
彼から箱を受け取って蓋を開けると、中にはピンクゴールドの時計が入っていた。仕事場でも使えそうなシンプルなデザインで女性らしさもあって、完全に私の好みだった。
『めっちゃ可愛い…！』
「へへ、喜んでもらえてなによりです」
彼に言われるまでもなく貰ったものを付けてみる。右手首にひんやりとした感覚を感じながら腕の位置を高くしてみるとそれはキラリと光った。
「似合ってますね」
『ありがとう。……でも、いいの？私に渡しちゃって』
「何言ってるんですか。ヌナ以外に渡そうと思える人なんていません。ヌナだけです」
心が読まれるんじゃないかってほどにじっと見つめられて、あまりにも真剣な顔で言うから何て返せばいいのか分からず言葉に詰まってしまう。
「目を瞑ってください」
『……何するの』
「大人しく目を瞑るんですよこういう時は」
怪しいと思いつつ言われるままに目を瞑ると、彼の歩く音が聞こえて次にギシッと音が鳴った。多分、隣に座ったんだと思う。
失礼します、の言葉とともに彼の手が額に乗せられ、あれ、私熱なんてあったっけ？なんてしばらく考えていたら目開けてもらって大丈夫ですと声が聞こえた。
『え、何したの？』
「ヌナにおまじないかけました。さあ、帰りましょう」
ハテナが一つ、二つ、三つ。
本当に、何したの？
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作者名：mi | 作成日時：2020年1月5日 23時
