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【中編】その赤は激情か 下 ページ8
「……そうだな。済まない、血迷ったことを……。
振り返っても仕方のないことは分かった気でいたのに」
「いいや。探偵殿も人の子、昔を思う事もあるだろう。
……どれ、良い機だ。この爺の昔話でも」
「ふ、長くなりそうだ。帰路には丁度良いかもな」
緩めた視界に映るのは、夕暮れの赤だ。蜩の鳴き声が郷愁を誘う。
――いつか火が嫌いではなくなる日が来るなら、この赤も心地良く感じられるようになるだろうか？
何もかも振り切ることが出来る日が来れば。
海の奥底へ消えていったあの人に詫び続けるのを、やめられる日が来れば。
目を伏せながら歩いていると、やがて山口助手が昔々、と芝居がかった口ぶりで始める。
私の連鎖する思考を見通し、むりやりにでも止めてくれようとしているものと思われた。
成程――いずれにせよ、今このときの景色を見るともないのは勿体ないことに違いない。
私は山口助手共々暮れの赤に染まりながら、「楽しみだ」とだけ返した。
(了)
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小春(プロフ) - 珈琲さん» 企画主様！閲覧ありがとうございます。（派生作品のご連絡遅れてしまってすみません……！） (2022年8月20日 18時) (
レス) id: fb7c2aa482 (このIDを非表示/違反報告)
珈琲(プロフ) - 描写が素晴らしすぎる…！「その赤は激情か」お気に入りです。 (2022年8月20日 17時) (レス) @page2 id: 3ddce89f00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小春 | 作成日時：2022年8月11日 21時
