掴みたいもの2 【兵頭十座】 (ページ17)

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episode.16 ページ17

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―あ「＿＿十座！」

後ろを振り返ると十座がいて、私の腕を掴む男の手を掴み、男たちに睨みつけていた。

「あ？なんだよあんた。」

十「言ってんだろ、こいつは俺の連れだ。」

「...！？やべ！こいつ兵頭十座だぜ！！」

「ま、マジかよ！？あの伝説のヤンキーの...！？」

「逃げろー！！！」

男たちは十座の顔を見て青ざめると、猛ダッシュで逃げていった。

あ「＿＿十座、ありがとう。」

十「たく...遅くなる時は連絡しろって。心配するだろうが。」

あ「ごめんなさい...」

十「＿＿怖かっただろう。少し落ち着くか？」

あ「うん...」

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－十座side－

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―俺たちは寮の近くの公園へ来ていた。

十「＿＿落ち着いたか？」

あ「うん、ありがとう...ジュースも、ありがとう。」

俺とAはベンチに二人並んで座っていた。

Aは怯えていたようで、俺は安心させるようにAの肩に手を回し抱き寄せていた。

あ「...十座の体温って本当に安心する。さっきまで怖かったのに、落ち着いた。」

十「そうか...ならよかった。」

あ「心配かけてごめんなさい。明日のオーディションのことを考えたら、夢中で練習してて。」

十「相変わらずだな、お前は。」

あ「＿＿でも、楽しかったの。こんなに久々に何かに夢中になれて。明日、不安だけど楽しみたいって思う。大好きな歌を歌うんだもん。」

Aはそう言い、俺に笑顔を見せる。

本当にこいつはいつも真面目で熱心だ。

そういう真っ直ぐなところ、俺は好きだ、A。

こんなに頑張ってんだ、お前なら大丈夫だ。

俺はそっとAの頭を撫でる。

あ「ん...十座？」

十「＿＿明日、頑張れよ。Aなら大丈夫だ。」

あ「十座...ありがとう。」

Aは満面の笑みを浮かべる。

あ「＿＿十座。キス、して...」

十「＿＿しょうがねぇな。」

Aがいきなりそう言い驚くも、俺は撫でていた手でAの頬に手を添え、唇にキスを落とす。

唇を離し、お互い見つめ合う。

そして、Aは俺の胸に顔を埋めるように抱きついた。

あ「＿＿ありがとう、十座。私頑張る。」

十「＿＿嗚呼。」

俺はAを包み込むように抱きしめる。

大丈夫だ、A。

お前ならきっとやれる。

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