掴みたいもの part3 (ページ27)

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episode.87 ページ27

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ー十「そういや、俺まだお前から好きって言われてねぇ。」

あ「え...言わなかったっけ！？」

十「嗚呼、言われた覚えがねぇ。」

あ「そんなはずは...」

あ、でも思い返してみると...

あ「言ってなかった...かも？」

十「...聞かせてくれ。」

あ「え！？」

十座は真剣な目で私を見つめる。

あ「あ、で、でもさ、こういうのって雰囲気とか場所が大事だしそれでうんぬんかんぬん...」

私は適当な言い訳を並べながら後ずさりをするも、十座は私に詰めかけるように迫って来る。

気づけば、出口の扉でもう逃げられない...

ーダンッ

ひっ...!!

十座は壁に片手を押さえ、私を逃げられないようにする。

十「...頼む、聞かせてくれ。」

十座...

真剣な目に、思わずまたドクンと胸が高鳴る。

あ「___兵頭十座が、好きです。」

十「...それを聞けて、安心した。」

十座はホッとしたような顔をすると、私の頬に手を添える。

十「...触れても、いいか？」

ー『...次、Aに触れる時は一言言う。だから、その時に聞かせてくれ。』

十座の言葉を思い出す。

キス、だよね...

私は目線を下に向け、静かに頷く。

十座が顔を近づけると、私はぎゅっと目を瞑った。

.....。

......。

........あれ？

何も起きない。

私はそっと目を開ける。

十「...やっぱ、いい。」

十座は頬を赤くして、私の頬から手を離す。

あ「え！？なんで！？」

十「...改めてAから好きって言われると、らしくねぇけど緊張しちまって...できねぇ。」

あ「...」

ーグッ

私は十座の首に手を回し、十座を引き寄せる。

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