欅坂メモリー

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Aside

とうとう仙台公演の日を迎えた。

これからの全国ツアーに、そして、東京ドームの幕開けになる大事な公演。

なのに。

「みんな、宮城3日間お疲れ様〜！」
「はい！」

3日間、仙台でのライブを終えて。
みんな、周りの2期生が達成感に満ち溢れた顔で頷いているのに、一人だけ下を向いた。

なんかね……申し訳なかった。
自分があそこに立って、本当に良かったのかな。

何回も念入りにリハーサルを重ねたし、フリだって、これでもかってぐらいに確認した。

それでも…なにも伝えられなかった、そんな気がして。

「A？ご飯は？食べんの？」
『あー…んー、ごめんね、食欲なくて…』
「大丈夫？体調悪いとか…」
『や、大丈夫。ごめん、気にさせちゃって。でもほんと大丈夫だから…』
「ならええけど…」

保乃ちゃんがそう心配してくれたけれど、やっぱり食欲がなくて。
というか……メンバーの中に居れなくて。

心配されてるような視線を感じるけど、気がついていないふりをして先に一人で送迎車に戻った。

『はぁ……』

車のシートで膝を抱えてうずくまる。

どうしよう。
怖い。

その時、ゆっくりと車のドアが開いた。

ーー

菅井side

あれ、とてちが小さく呟いたのが聞こえた。

「どうしたの？」
「…Aちゃんは？」
「それなら、先に送迎車に戻ってるって。仮眠でもとってるんじゃないかな…」
「そっか…」

そういったくせに、てちのその眉毛は心配そうにハの字に下がっていて。
心配、してるんだろうな…。

「……私…ちょっと様子見てくる」
「てち？」

ほら。やっぱり心配してる。
楽屋から飛び出していくてち。
Aちゃんに、どんな言葉をかけるんだろう。

Aちゃんのパフォーマンスはすごい。
私にも分かる。
多分…すごいたくさんの期待を背負ってるんじゃないかな…。
同じように、たくさんの人の期待を背負って、最前列に立っているてちにはきっと、Aちゃんの気持ちが痛いほどわかるんだろうな。

最年少だったのにね、いつのまにか先輩になってる。

てち、ありがとう。

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