本丸開拓だよ2 (ページ26)

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71.布ページ26

『あっ』

洗濯場の少し先の木の根元に飛んでいってしまったのかシーツが丸まっているように見える。

『取りに行ってきますね』
「え、何を？」
『洗濯物が飛んでいってしまったようなので』

加州さんもその言葉に木の根元を見た

「あれ、洗濯物じゃないし」
『え？』
「近く行ってみる？」

そう言われ、加州さんに引っ張られ寄ってみる

『え？』

シーツが飛んでしまったのかと思っていたけど違った

何か汚れた布を被っている人がいる

「山姥切国広。手入れしたでしょ？」

そうだ。この人も蔵に閉じ込められていた

二人で近くに寄っているのに、山姥切さんは気づいていないのか、見向きもしない

手入れの件から会っていなかったので、傷の具合を聞いてみた

『失礼します。この本丸の審神者となりました。蔵での手入れの件について伺いたいのですが、少々よろしいですか？』

しかし、私の声など聞こえていないかのように全く動じない

汚れている布を頭から深く被っているため表情も読み取りずらい

少し様子を見ると、山姥切さんは落ち込んでいるのか、そんな雰囲気だった

「なぜ」

そう呟いているように聞こえる
私は距離を離して座る

「何故俺が助かったんだろうな、写しの俺が､､､」

(うつし､､､？)

絞り出す様に小さな声でそう俯いている
呟いた言葉の一つが引っかかるものの、その言葉は自分自身を責めるように発している事が分かった

(この方は自分が助かったことを責めているのか､､､他の刀剣達は重傷で刀に戻っている人もいた。なのに自分だけと思っているのか)

閉じ込められていた彼らに全く落ち度はないのに、自責の念に駆られてしまうのは仲間を思っている証拠だろう

それと､､､山姥切さんの場合は少し卑屈になりすぎている点もあるとは思う

(今のこの方にとって慰めは逆効果になるだろうな､､､)

今知り合ったばかりの私が何を話そうと、この人の心には響かない

それならば、

(今は寄り添うことよりも話をするだけにしよう。山姥切さんには知っていて貰いたい話を)

『差し出がましいとは思いますが､､､。卑下するのはおやめ下さい。堀川さんと山伏さんの為にも』

兄弟を引き合い出すと山姥切さんはやっと反応してくれた
青く綺麗な目がこちらに向けられる

「兄弟たちのためにも？」