43.一本下駄 ページ44
やっとの思いで落とし穴から登り終え、顔を出すと、目の前には一本下駄を履いた足が見える
足の大きさからして、短刀だろうか
確認しようと顔を上げるとやはり短刀だった
白い髪が腰まであり幼い顔の片目が隠れている刀剣男士
ただ、その短刀を両手に持ち、今にも振りかざそうしている
(あ、、、)
振り下ろされた瞬間に咄嗟に蝶を呼び、結界を張る
バチッ
その子は弾かれたため遠くへ飛ばされるも空中で身を翻しトンっと静かに着地する
(綺麗、、、)
殺されそうになったのに体勢を直しながら
ひらりと着地する様に見とれてしまった
この本丸の空気を浄化するために蝶を2.3頭出し、常に力を消費していたがまさかこんな形で役に立つとは思わなかった
(まあ、夜中に狙われたら元も子もないけど)
目の前の刀剣男士は俯きながら静かに刀を構える
「あなたはなぜここにいるのですか」
(確か、、、彼は三条派の、、、今剣さん)
「まただれかをとじこめにきたんですか」
小さな声で独り言の様に彼は言う
(閉じ込めに、、、?)
疑問に思いつつ、すぐさま落とし穴から這い出て向かい合う
『申し訳ありませんが、私には意味がさっぱり理解できません。この道の先にある物を、あなたはご存知なんですか?』
そう聞いた瞬間、今剣さんは更に険しい顔をして言った
「うそばっかり、、、そうやって、だまして、きずつけて、みんなのたいせつなひとをうばったのは、、、だれですか!」
『っ!』
一瞬にして足元にまで距離を詰められたものの
すぐさま結界を張り守りに徹する
弾かれても、弾かれても、彼は向かってくる
傷を負っているのに。動く度に出血し当たりに血が散っていく
(どうして、、、そんなになっても、、、)
ああ、そうか、、、
前任の審神者亡き今、怒りの捌け口がないんだ
そこへ同じ「人間」の私がやってきたんだから
私にぶつけてくるんだ
自分のためにも仲間のためにも
私を排除するまで彼は止まらない
その過程で自分の傷も体もどうなってもいいと思っている
その姿にいたたまれなくなり結界を解き攻撃を受け止めようと目を瞑った
死にたくない、、、
けれど、もしかしたら私を攻撃したことで落ち着いてくれるのではないかと願った
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作者名:とり丸 | 作成日時:2020年4月29日 22時