34.虚勢 ページ35
本体の方で傷がある箇所に手を当て力を注ぐ。
それを正面に座りじっと見てくる次郎太刀さん。
(やりずらい、、、)
そう思っていると、急に次郎太刀さんの右手が伸び私の髪に触れる。
気にしないように手入れを続けていると今度は首を触られ静かに力が入ってくる。
(締められるか、折られるか。でも手入れはさせてもらいますよ)
そのまま手入れを中断せずにいると掴んでいた手を緩め、後ろの首筋を人差し指でスーと撫でられた。
急に怖気が走り、手入れに注いでいた力がまばらになる。
次「ははは!くすぐったいよ!」
『それはこちらの台詞です!何するんですか、急に』
次郎太刀さんはひとしきり笑ったあとで聞いてきた
次「あんた死ぬのが怖くないの?」
『、、、いえ、死ぬのは怖いです。先日の出陣でも恐怖で足がすくんでいる所を助けて頂きましたし。あの時助けられなければ私は死んでいましたから』
次「へぇ、正直だね」
『虚勢を張っても見苦しいだけですからね。それにここにいる方々はすぐに見抜いてしまうでしょうし』
次「分かってるね。人間は欲も、弱さも、全部隠しきれる訳じゃないからね。ここに来た連中は上手く隠してたけど、最後化けの皮が剥がされた時はそりゃあ見ものだったよ」
(猫でも皮でも被ったところで相手は何百年と色んな人間を渡り歩いて来た刀だ。騙すなんて、経験が違うだろうに)
以前ここに来たという審神者には少し呆れると
同時に剥がれる皮がなくて安心してしまった
次「広間での事は聞いたよ。あんたはここに来た時から覚悟決まってたんだろ?」
『い、いや、そういう訳じゃなく、、、ただ怖気付いただけで、、、』
次「はは!ほんと正直だね!」
次郎太刀さんに押されつつも手入れを終え、
太郎太刀さんの手入れを始めた
次郎太刀さんと変わり、静かに手入れを受けて貰えている。
手入れが終わりかけになると太郎太刀さんが口を開いた。
太「あなたは今までここへ来た審神者とは少し違うようですね」
『、?そうですか?』
「ええ、欲というものが見えない。何かに押されてここに居るような気がします」
『、、、』
何故か見透かされてしまったような気持ちになり、顔を背けた。
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作者名:とり丸 | 作成日時:2020年4月29日 22時