本丸開拓だよ (ページ26)

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25.加州清光2 ページ26

本題がズレていることに気づいて声をかける。

「で、俺に用事あったんでしょ」
『あ、加州さんに渡したいものがあって。
　こちらなんですけど､､､』

取り出したものは小さな長めの箱。

「何これ」
『爪紅です』

開ける前から中身を教えてくれた。

『加州さんの手入れをさせて頂いた際に爪紅されていましたから、好きなのかなと思いまして。さすがに手入れでは爪紅塗れませんので
新調した物をお持ちしました』

中身を確認してみると筆と丸い入れ物に
赤い爪紅が入っている。

「これ、俺使っていいの？」
『どうぞ、あなたの為に買ったものですし。
　お疲れのところすみません。私はこれで失礼します』

俺は何故かあの人が戻ろうとしていたのを
「ちょっと待って」と呼び止めてしまった。

「いや、あのさ、爪に塗るの久しぶりだからさ手伝ってくれない？」

言った途端に不安になってくる。

どうしよう断られたら、

前の主みたいに怒るかも。

言わなきゃ良かった。

『いいですよ』
「え、いいの？」

まさか受け入れてくれるとは思ってなかったので、聞き返してしまった。

『ですが、私も塗り慣れていないので下手ですけど、それでも良ければ』

とあの人は隣に座り直す。

「なんか、ありがと」
『お気になさらず』

嬉しくてこそばゆい、

「安定もやってもらう？」
「ええいいよ、やらなくて」
「いーじゃん、やってもらいなよ」
『加州さんあまり動かないで下さい』
「はーい」

俺のために誰かが何かをしてくれるなんて
　無かったから。

この人なら俺を愛してくれるかな。