【Kiramune】たった1人のシンデレラ�供敍�野自由】

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神谷さんはお店を出た後もなるべく入野さんの話を避けながら、私の家まで送ってくれた。


「今は辛いかもしれないけど、絶対にAちゃんは裏切られてない。俺が保証するから、元気出して」

「・・・はい」


まるで年の離れたお兄さんみたいだ。
優しい声と表情で私を癒してくれた神谷さんは、「またご飯行こうね」と言って駅の方へ向かって行った。

家に帰ると、母にも心配された。


「A、大丈夫なの？」

「・・・うん、多分」

「お母さんは、入野さんを信じるから」


そう言ってくれたのは、救いだったように感じる。

自室に戻ってベッドに寝転んで。
スマホを開くと、入野さんからLINEが十件近く届いていた。
全て違う時間だ。

『A見たら返事して』『電話出来る？』『お願いだから、返事して』とか、同じことばっかり。


わかっている。心配してくれるって。
私が遊ばれているわけじゃないのかもしれないっていうのも、なんだか薄々気付いてきていた。

でも、それでも。
何か私に隠しているのは事実だ。
それがすごく、嫌だった。


今朝まであんなに幸せだった。

大好きな体温に守られて眠るのも、大好きな声で起こされるのも。


裏切られたわけじゃないってわかっていても、こんなに哀しくて。
今は、部屋中の入野さんを観るのが辛いよ。


『電話出来る？』じゃないの。
嫌だよ。会いたいの。

私って我儘？呆れちゃう？


でもそうなるほど、
それほど愛してくれたのは、あなたじゃない。


「入野さん、・・・自由さん、・・・会いたいよ・・・」


小さな声は、直ぐに消えた。


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