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「高木Aです。今は現役の大学一年生です。」
「・・・未成年・・・?」
「そうです」
喫茶店に移動しコーヒーが来るまでは無言だったが、恐らく互いにコミュニケーションは不得意ではないので、打ち解けるのにはあまり時間はかからなかった。
どうやら入野さんは、私を成人していると思っていたらしい。未成年と一緒に過ごしているという事実があまり好都合ではないのだろう、「そっか・・・」と言ったきり、考え込んでしまった。
というか、幾つか老けて見えていたということだろうか。
「やっぱり、未成年って都合悪いですか?」
「まあ撮られたら終わりだよね」
「じゃあもう帰ったほうが・・・」
「いやいいよ、成人してるように見えるし」
撮られたところで熱愛じゃない?と入野さんは笑った。
笑い事ではないのではないだろうか。
確実にファンに刺される。
でも本人がいいって言うならいいか!
今お付き合いされている方がいないってことだろうし!
うん!悩んでも仕方ない!今を楽しもう!
こういう時、自分の楽観的な性格は便利だと思う。
「俺のことは多分俺よりよく知ってるでしょ
Aちゃんのこと教えてよ」
Aちゃん。
顔と耳が、熱くなるのがわかった。
ああ今、絶対顔赤い。恥ずかしい・・・。
「わたしのこと、ですか?」
「そう。いつから俺のこと好きなの?」
「え゛!?なんで知って」
「見てればわかるじゃん(笑)」
「・・・高校一年生のときから、です」
「へえ、結構長いんだね」
「いやいや、まだまだ短いですよ・・・」
私ってそんなにわかりやすいのかな・・・。
平然を装って話を続けるけれど、頭は混乱している。
ていうかよく自分のことを好いてる女の子と遊べるな、さすが入野さん、チャラいな。
これ本人に言ったら怒られそう。
でも多分、これはチャラいとかそういうんじゃない。
大人の余裕、なんだろうな。
そう考えてしまうと、向かいに座る入野さんが一気に大きく見えた。
手が届くなんてありえない。
こんなに話すことが出来ても、増してや恋仲になるなんて、来来来世くらいじゃないと無理そうだ。
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作者名:莉兎 | 作成日時:2019年4月2日 16時