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「俺、浮気なんかすると思われてんの?」
「そ、そういうわけじゃないですけど」
不安なんです・・・周りには綺麗な人ばかりだから。
そう続けると、入野さんはいつものように溜め息をつく。
「あのさぁ、いつも言ってるでしょ?俺はAがいいの。」
「でも、やっぱり不安です」
「なんで!」
なんで、と言われて口ごもった私に、入野さんは「何かあるなら言えば?」と少しぶっきらぼうに急かす。
いつかのときと同じように、「引いたりしないですか?」と保険を積んで。
「入野さんに、もっと、触れたくて」
だめってわかってるんです。
入野さんが大人だから、それをわかって手を出さないでいてくれていることも、私なりに理解しているつもりです。
でも、入野さんの体温を、もっと感じていたくて。
身体だけで愛が生まれるなんてことは絶対にないですけど、言葉だけで生まれるなんてことも、ないと思うんです・・・。
そこまで言って、恥ずかしくなった私は頭まで布団を被った。
入野さんは、何を言わずに私の頭に手刀を落とす。
「いたっ!」
「ばか」
「ほんっとに、ばか」そう言った入野さんを布団の隙間から盗み見ると、赤くなった顔を頬杖をついていない方の手で隠していた。
私が見ていたことに気付くと、私の目をその手で塞ぐ。
「俺がどれだけ我慢してると思ってんの」
「何回Aのことを襲いたいと思ったかわかってんの?」
「ダメなものはダメ、そういう行為は絶対お前が成人するまでしない」
「でも、」
キス、もっとしよう。
ごめん、そこは俺も、耐えられないからなんて理由つけて避けてた。
俺は俺で頑張るから、不安なんて言わないで。
いつになく優しい口調でそう言うと、目を塞いでいた手は私の髪を優しく梳いた。
安心して目を閉じると、不意打ちに唇に柔らかい感触。
私が目を開けると、それが合図だったかのように、角度を変えて何度も何度もキスをした。
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作者名:莉兎 | 作成日時:2019年4月2日 16時