検索窓
今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:97,461 hit

030 ページ31

.


「唇に、キスしてもいい?」



それは、もう戻らないということを意味していた。

何があっても。母とのことがどんな風に転んでも。
唇へのキスをしてしまえば、入野さんは私のことを、私は入野さんのことを、離すことができなくなるだろう。

“その先”は一年後であるとわかっていても、
“その先”を通り過ぎても。



何故だか、そう思うのだ。


真っ直ぐ私の瞳を見つめる入野さんを見ていたらそう感じられ、私もまたそう思った。


躊躇いながらも声を出さずに頷く。

顔が熱くて、入野さんに熱が伝わってしまいそうだ。


「・・・いい?」

「・・・二度も、訊かないでください」

「だって、Aファーストキスでしょ」

「そうですけど・・・」


十センチもない距離で話しているほうが、キスをするよりずっと恥ずかしい気がする。

入野さんは私の顎に指を添えると、


「・・・じゃあ、Aの“はじめて”、一つ目ね」


そう言って、顔を更に近付けてきた。

前言撤回。全然さっきより恥ずかしい!!


「め、目はどうすれば・・・!」

「好きにしてて」


そう言われても・・・!
と思っているうちにも、入野さんの顔はもっと距離を詰めている。

耐えきれずにぎゅっと目を瞑ると、唇に柔らかい感触を感じた。


「っ、」

「ん」


唇が離れたあとの入野さんの息づかいがとっても色っぽくて。
もっと体温が上がったような気がした。


何かを考え込んで目を逸らした入野さんは、私の首筋にかかった髪を避け、そこにも口付けをする。


なんだか何も考えられなくて、頭が真っ白になって、無抵抗で、ただただ恥じらいだけを感じた。


.

031 Side : M.I→←029



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (46 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
127人がお気に入り
設定タグ:入野自由 , kiramune , 声優   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:莉兎 | 作成日時:2019年4月2日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。