【第五人格】綿遊び【短編】 (ページ7)

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占い師ページ7

自分の指に光る婚約指輪がこんなにも邪魔なものだと思わなかった。いや確かに、確かに僕は彼女を愛していて彼女のために預言の力を失い彼女との約束のためにこの荘園へと訪れた。けれどもう何度もゲームを繰り返すうちに悟ってしまったのだ、僕はもう二度と彼女の元へは帰れない。
なのに何度捨ててもこの左薬指には、手錠のようにいつの間にかこの銀の輪が嵌められていた。

「イライ君っていつもその指輪見てるよね、残してきた奥さんが心配？」

「いや……ああそうだね、心配だ。僕も長く此処にいるからね」

嘘つき、眼で相棒が訴えてくる。ああ知っているさ。だがAには見えていないだろう、この布の下の目が指輪を忌々しく見つめていることなど。この金属のせいでずっと君に好きだと言えないことなど。

「外の世界がどうなっているか全然わからないもんね」

「ああ」

もう何年も此処にいるが荘園の外の情報は全くと言っていい程手に入らない。新しく来たサバイバーに聞いてみるも、荘園の主によって今世界でどんなことが起きているかを話すことは出来なかった。
僕らは姿形が変わらないまま、いや時が止まったままなのだ。けれど外はきっと時間が進んでいて、とっくに自分の婚約者など死んでいるのではないかとさえ思う。本当に嫌な奴だ、僕は。知っていたけど。

「Aは誰か待たせている人がいるのかい？」

「え、私？……んーまぁ、あーでもなぁ」

軽い返しのつもりで聞いた質問に、言いにくそうな素振りをして斜めの方向を見る彼女。本来だったら踏みいってすまないと謝るがそうは言えなかった。どうしてもその先が聞きたくて申し訳ないけれど彼女をじっと見る。

「……あのね、此処に繰る前に婚約者と大喧嘩しちゃったの。それで家を飛び出して、ホテルを転々としていたらここへの招待状が来たの」

「じゃあ、そのまま？」

「そ、探しに来るだろうってって思ったから簡単に見付からないようにここに逃げてきちゃった」

「そんなに彼から逃げたかったのかい？仮にも婚約者だろ？」

「今日はイライ君よく喋るね」

釘を刺された。
彼女の少し悲しそうな目にやり過ぎたと感じ今度こそすまない、と謝って彼女から目を逸らした。そりゃそうだ、ここに来る前の別れ話(とは決まっていないが)を話してなんとも思わない筈がないのだ。
ただそれ程までに彼女のことを知りたかった。