【第五人格】綿遊び【短編】 (ページ15)

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「どうせ彼女を脱落させようが君を脱落させようが私の勝ちはもう無いので。どうせだったら勝たせてあげようという私の気まぐれですよ」

「はぁ……」

開いた口が塞がらないとはこういうことだと今身をもって実感している。なんでそんな急に、と訝しげに睨めば彼は僕ではなく、納棺された彼女を見ていた。

「黄色い薔薇、ですか。無駄に美しいですね」

「無駄って……」

「ときに君は黄色い薔薇の花言葉を知っていますか？」

それが世界共通ならば。あんなにも我が師が似合うというもんだから、ふとそれを思い出し興味を持って調べたことがあったのだ。その言葉を見つけた瞬間に思った、ああ、だから、と。
その頃は僕とは切り離された世界の話だと気にせずにいたがやはり僕は彼の弟子だ、今になって、Aを納棺して彼のあの言葉を心から理解してしまった。

「知っているようでしたら、貴方大分歪んでますね」

「、なんとでも」

「別に非難も軽蔑もしませんよ。ここには真っ白な生き物はいないんですから」

おや、こうやって蘇生するんですね。と死体が呟けば生き返ったAが棺桶からどろりと現れ、目の前の表情のない顔にぎょっとした顔で返した。
その表情に満足したのか白黒無常はそのまま何も言わず90度方向を変えて歩き出す。……本当に僕らを逃がす気らしい。

「え、え？何がどうなってんの？」

「気まぐれだそうです、行きましょう」

「ええ……？」

ここに長居は無用だと死を免れた彼女の腕を引っ張ってゲートへと進む。通り過ぎる際に枯れた薔薇が少し舞って名残惜しそうに彼女の髪を掠めた。
花としては一生彼女を彩りたかったのだろうが、はは、ざまぁみろ。どうやったって僕は彼女を死から奪い去る。

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是非花言葉を調べてみてください。