続き ページ14
「まぁ、幸せ言うてもその感覚は人それぞれやからなぁ」
ゾムは腕を組んで考えるそぶりを取った。
Aはふと彼がどんな時に幸せを感じるのか気になったので聞いてみた。
『ゾムさんはどういう時に幸せだと思いますか？』
「あぁ、俺はゲームしてるだけで幸せやし、仕事とか友人と話すだけでも幸せやで」
『それは、どう頑張ったらできるんですか』
是非参考にしたいと前のめりになってAは聞いた。そして、ゾムは真剣に聞いてくるAをじっと見つめた後。ぱちんと軽めのデコピンをおでこにかました。
『！？！？』
突然の出来事にAはおでこを抑えて、目を白黒させた。ゾムはその様子があまりに面白くて声にならない笑い声を上げた。
「くくっ、こういうなんはあんまり肩に力入れたらあかんねんで。人は努力努力、勉強勉強とか堅苦しいもんで物事の優劣決めるけど、俺はなんかちゃうと思うねんな」
『で、でも、やっぱり、学歴とか有能な人とかコミュ力がある人が人生楽しそうだなって』
でもと妥協してくるAに対し、ゾムはいやそれは違うと手を振った。
「ちゃうちゃう、そんなんやなくて。もっとなこう夢とかさ運命とか信じてもええやないって思わん？平凡な人間でも楽しい事そこらへんに転がっとると思うで？せやなぁ、まずは1日1日を大切に楽しんでみるって目標作るのはどうや？結構、いい策やと思うんやけど」
Aはそう言って微笑む彼を見るとなんだか勇気が湧いてきた。こんな風に相談する人も励ましてくれる人も滅多にいないから嬉しかった。こんなにキラキラ輝く人に激励を貰って元気が出ないわけがない。
『なんだか、元気が出てきました』
「ほんまか？良かったわ」
『ゾムさんみたいに毎日を楽しむような人になりたいです』
「おぉ、その粋や。けど、無理せん様にな。また、なんかあったらここに来るとええ」
そう言って、暫し雑談した後。Aはこのバーを出た。ゾムさんに言ってもらった事を思い出しながら。帰りの道を辿る。
今度はいつこのバーに来ようか。
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作者名：雪だるま | 作成日時：2019年10月23日 21時
