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41、王の僕は幸福な夢を見るか ページ41

××



唇を噛み締め、トランプを睨みつけるA先輩に向けて、私はゆっくりと口を開いた。


「しかしながら、私は札遊戯(ポーカー)もブラックジャックも知りませぬ故、婆抜き以外の勝負でしたら、A先輩に敗北していたと断言出来ます。私が勝てたのはA先輩が婆抜きにして下さったからです」


私が勝利したのは遊戯が"婆抜き"だったからに過ぎない。ブラックジャックや札遊戯(ポーカー)だったら秒殺されていただろう。自分の身の程は心得ている。


「しかし、勝利は勝利。教えて頂けませんか、太宰先輩の居場所を」


A先輩は無言で胸元から紙を取り出し、万年筆を走らせる。そんなA先輩の姿を見て、固唾を飲んで一部始終を見守っていた部下の方々が少しざわめいた。


「勘違いするな。……今回は勝負のうちに入らない」

「……ありがとうございます、A先輩」

「だから先輩と呼ぶ……もういい。どうせ貴様と会うことは二度と無いだろうからな」


A先輩は不愉快そうに眉を寄せると、顎で出口を示す。もう二度と会うことがない、なんてこうも完全に断言されると少し意地悪を云いたくなるではないか。なので金庫室を出る前に、再度後ろを振り向き、云った。


「今度は札遊戯(ポーカー)を教えてください、先輩」



***



Aがいなくなった金庫室は静寂に包まれていた。皆、息を押し殺し、王であるAの様子を伺っている。首輪をつけられている為、下手な事は出来ない。

ある少年は七竈Aを羨望した。
支配者であり、王であるAと対等に会話し、彼に勝利したのだ。羨望、尊敬、そして嫉妬、皆、様々な感情をAに抱いた。少年はただ自由で、身軽な彼女が羨ましかった。


「おい、片付けておけ」


Aの一言で、止まっていた時間は再び動き出す。
非日常は呆気なく終わりを告げ、再び普段通りの窮屈な日常が始まる。



**

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黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんず | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年6月14日 21時

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