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21、美しく、朽ち果てる ページ21

××



「……はあ」


中島先輩と出逢った鶴見川の岸辺に、座り込んでいた。生温い風が吹く。川の流れを眺めていと背後から「やっと見つけた」と声が聞こえた。


「だ、太宰先輩……」

「あ、ほら逃げようとしない!
君にこれだけは伝えようと思ったんだ。
敦くんは無事入社試験に合格して、探偵社員になったよ」


心臓が、ぎゅっと痛くなった。
そうか、中島先輩は探偵社員になったのか。
先輩が遠い世界に行ってしまったみたいで、なんだか悲しくなる。


「ふふ。悲しそうだね。
そんなに悲しいのなら、君も探偵社員になったらいい」

「……いえ。私には」


なんとなく、探偵社員になったら私はもう二度と地元に戻れなくなるような気がした。私の感情を察したのか、太宰先輩はすっと目を細めた。


「そんなに帰りたい?」

「はい。帰れるのなら」

「無理だよ。君は帰れない。帰らせない」

「何故ですか」

「そういう運命だから。
君が十七になったらヨコハマに出ることは仕組まれた運命だった」


果たして、最初から仕組まれていたことを運命だと呼べるのだろうか。太宰先輩の言葉に疑問を抱きながら、私は瞳を閉じた。現実から目を背けたくなった時、私は瞳を閉じることに決めている。何も見えない。


「敦くんがマフィアに襲撃された」

「……っ!?」


太宰先輩の一言に、再び瞳を開いた。
マフィア、それって真逆。真逆。


「芥川、龍之介ですか?」


その名を云うと太宰さんはぴんぽーん、と陽気に笑った。


「よく知ってるね?逢ったことあるの?」

「つい先程……中島先輩はご無事なのですか!?」

「それは自分の目で確かめて来たら?」


太宰先輩はそう笑うと、ゆっくりと川に足を踏み入れていく。何をしているのですか。震える声で訊ねると「入水」と言葉が返って来た。


「私の事は良いから、敦くんの元へ行き給え。
それとも……敦くんより私のことが心配?」


背を向けている為、その表情はわからなかった。
私はそっと息を吐く。何か云おうと思ったのに、言葉が出てこない。


「七竈の実は」

「はい?」

「七竈の実は、固くて苦しいから、鳥も食べずに残してしまうことがある。七竈の実は美しいまま朽ちていく」


唐突に七竈の実について説明され、ただ困惑していると「まるで君みたいだ」と笑った。その言葉の真意は不明だが、きっと良い意味ではないと、思う。


「私は、私は、その様にはなりません」


それだけ云い残し、私はその場から去った。



**

22、迫り来る絶望に→←20、芥川龍之介という男



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黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんず | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年6月14日 21時

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