自慢の彼女【及川徹】

5 ページ6

.




「ねえ、Aちゃん。」




夜ご飯を食べた後、２人でソファでゆっくりとテレビを見ていると、後ろから肩口にぐりぐりと擦り付けられる茶色い頭。
彼がちゃん付けをする時は、なにかある時。
………気分の時も大いにあるが。




「どうしたの？」


「………俺もう我慢できない」


「え？」




何を？
何を言ってらっしゃるのかな？この人は。
そんな雰囲気でも無かったのになんで急に？

私の頭に浮かぶのは甘い時間。
初めてなわけではないけど…
とりあえず雰囲気的に違いそうなので、聞き返してみることにした。




「何のこと？」

「俺、彼女いるって言いたい！」




なるほどー、そう来たか。


私たちが付き合っていることを隠している理由。
別れを告げたあの日に我慢の限界、トラウマも一緒に伝えたことで、私が大丈夫になるまで付き合ってること言わなくてもいいからと彼が提案してくれたことだった。



「俺から言わなくてもいいよって言ったけど、彼女いないって言うたびに辛いし、Aに男が寄っていくのも見てられない…」

「徹…」

「俺に女の子が寄るのもAだって嫌でしょ？」

「そりゃあ、嫌だけど…」

「Aがまた嫌な思いするのは嫌だけど、それを守れないほど俺も弱くないよ？」




そういって後ろからの力は強まっていく。
けれども、いいよという言葉はどうしても口から出すことは出来なかった。
悲しい顔をした彼はそれ以上その話題を口にすることなく私へと口付けを落とし、姫抱きにされ寝室へと連れて行かれたのだった。

6→←4

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す