{男主}大切な誰か{MLP}

No.27欲望 ページ31

私が彼の記憶を追い求めて、どれくらいが経ったろう。


相変わらず彼は元気なようだ。手紙を送ると返事が来るが、向こうから来ることは無い。


「ああ、今日も来なかった」と思う度、私は彼にとって迷惑な存在なんだろうかと思う。


泣いていた彼をほっとけなくて、最後まで首を突っ込んでしまった。彼も余計なお世話だったろうに、何も言わず私の手を握ってくれた。


あの後泣かなかった訳ではなかった。何度も彼の元へ戻りたいと願ったし、彼と共に人生を歩みたいとも思った。


けれど彼は私を置いていってしまう。アリコーンである彼は、ただのしがないユニコーンの私を。


何度アリコーンになりたいと望んだだろう。きっとそんな事は無理だと思いつつも、欲望を捨て切れない私がいた。


セレスティア様のお陰でアリコーンになれた時は、どれ程喜んだだろう。面には出さなかったけれど、親友達にはもう分かっているかもしれない。


ただ、私がアリコーンになったという事実は、彼にはまだ伝えていなかった。どうしても踏みとどまってしまう、あと一歩が踏み出せなくて。


どうせ私はいくじなしだ。

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