だいすきって、もっと言って (ybin) (ページ7)

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それから、いのおが先に風呂に入って、次に俺が入って。
やっぱいのおからのチョコはねえよなあ、って風呂の中でちょっとしょげて、こんな顔でいのおの前に出らんねえな、って頬をぺちぺち叩いてしょぼくれた顔をなおしてから風呂を出ると。

「あ、やぶ、」

「は、おまえ、え？」

「えへ、絡まっちゃった。」

桃色のリボンを体に絡みつけたいのおが、そのリボンと格闘していた。

「なに、やってんの……？」

「えっと……バレンタインデーじゃん、きょう。」

「そうだけど……」

「ちょこ。知念に、渡すんだったら、自分の体にリボンつけるといいよって言われたから、しようと思ったら、絡まった。」

まったくお前は、とため息をついて、バレない程度に唾を飲み込む。
無邪気に微笑む顔と、少し赤い頬と、まっしろな体に絡まった桃色のリボンと。
とんでもない背徳感にじわじわと汗をかいて、平静を装いながら必死で頭の中の欲を振り払った。

「あのね、手作りでね、山田と作って、」

「は？」

山田。今でも、いのおの口から名前を聞くと、少し、心がざわつくのに。
山田と、作った？

「えっとね、山田、すきなひとがいるんだって。
……幸せそうな顔してね、話すんだあ。きっと可愛い女の子でね、山田のこと、ずっと待っててくれてるんだって。」

うまくいってるといいな、なんて笑って。
自分の醜い嫉妬と、いのおのきれいなこころと、いろんなものに挟まれて、無意識に唇を噛んだ。

「そんでね、山田が、あんまりにも甘い顔でその人のこと話すもんだからさ……おれも、やぶのこと話してるとき、こうなのかなあって思ったら、恥ずかしくて、でも嬉しくてね、っひゃ、」

ふわふわ、甘い匂いがする。チョコと、焼き菓子みたいな匂い。
抱きしめて香ったそれの中に、微かにいつものいのおの安心する匂いが残っていて、おさめたはずの欲がまた頭の中にちらついた。

「チョコね、ポッケの中とか、ちいさく包装して、いろんなとこに隠したからさ、探してよ。」

「……知念の入れ知恵？」

「ん。パンツの中にも入れろって言われたけど、食べ物だからさすがにやめた。隠すとこあんまりないから、今日の帰りにポッケの多いパジャマ買っちゃったよ。」

えへ、と笑ういのおを姫抱きする。
意味に気がついたいのおは、俺の首にするりと腕を回して、妖艶に微笑んだ。

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