だいすきって、もっと言って (ybin) (ページ2)

今日:2 hit、昨日:6 hit、合計:46,051 hit

ゆきページ2

.

side:K.I

しんしん、この辺りにしてはめずらしい量の雪が降り積もる。
やぶ、今日は生徒会の会議があるから遅くなる、って言ってたけど、ちゃんと帰ってこれるかな。

ひとりぼっちの家の中は静かで、とさとさ、雪が積もる音まで聞こえてくる気がする。どうやら俺は、この家に、おれがいて、やぶがいる、その幸せな空間に慣れきっていていたらしい。

「……さみしい、」

やぶも今、ひとりの帰り道で、雪を見て、さみしいって思ってるのかな。
もしかしたら、傘がなくて困ってるかも。
今日はやぶ、マフラーをしていかなかったから、寒くて困ってるかも。
たくさんの理由をつけて、傘をひとつだけさして家を出た。

学校への道を歩いていると、前から、頭に積もる雪をはらいながら、愛しい人が歩いてきて。

「っやぶ！」

ぱっと顔を上げて、見開かれた目に、半開きになった口に、どうしようもなく愛おしさを感じて、少しだけ自分の口角が上がった。

「いのお！？先家に帰って待ってろって言ったろ！
ああもう、体こんなに冷やして、」

俺に駆け寄って、冷えた俺の頬よりも冷たい手で俺の頬に触れる。
その冷えでさえも、分かち合いたいなんて、ちょっと重すぎるのかな。

「だって、……さみしかった、から。
あの、えっと……雪、そう、雪をね、ひとりじゃなくて、やぶといっしょに見たかったの。」

少しの間だけおれを見つめたやぶは、ふ、と優しく笑って、手を差し出した。

「ほら、傘かせ。」

「ほえ、」

「一緒に帰るんだろ、雪見ながら。」

少し強引に奪われた傘。透明のそれに積もった雪がぱさぱさと落ちて、真っ白なつぶがたくさん落ちてくる夜空が顔を出した。

.