だいすきって、もっと言って (ybin) (ページ1)

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年越しページ1

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「風呂上がった。抜いとく？」

風呂から上がると、いとしいこいびとは、年末恒例の歌番組を見ていた。

「うーん……抜いといてほしいけど……あとででいいや。
やぶ、こっちきて？」

テレビの前の、2人がけのソファの右側。
ぽんぽん、と叩かれたそこに座ると、ぽすんと俺の膝にいのおの頭が乗った。

「……そんなんしてたら寝ちまうぞ？」

「ん……このまま寝れるなら寝てもいいかも……」

甘えるようにすりすりとされて、心が少しくすぐったいような、そんな言葉にできない感情に襲われた。

「年越しは2人がいいって言ったの、いのおだろ。」

「ふふ、じょうだんだよ。
……あ、」

指をさしたテレビ。
そこには、俺が好きな曲を歌っている、アーティストがうつっていた。

「やぶ、のすきなうた。」

あの日、電話で聞いたヘタクソな鼻歌がよみがえる。
胸が苦しくなって、どうしようもなくなるような思い出。

「おれね、これ、おれもすきだよ。」

ふわふわ、微笑む。
きっと、そんな思い出でも、いのおの中では、このゆうるりした幸せへの過程として、大事な道のりとして、大切にされているのだと思う。

「……大変そうだねぇ、ねんまつ。芸能人のひと。」

しばらく無言が続いた。でもそれは、心地の悪いものではなくて。
そのあとに口を開いたいのおは、ばたばたとステージで入れ替わるアーティストたちを見ていた。

「でも、これが、このひとたちの幸せなんだよね。」

「……俺はいのおとこうしてゆるゆるしてんのが幸せだよ。」

大きくて、可愛らしい目が、今度は俺の方を向いて、じっと見つめて。
ふんにゃりと嬉しそうに細められた。

「おれも。」

ねぇ、と開かれた口は、優しく弧を描いて。

「らいねんもおれと一緒にいてくれる？」

「……来年っていわず、ずっといてやるよ。」

体を折って、いのおの唇に自分の唇を近づける。
触れた熱は馴染んだもので、でも、ひとつひとつを大切にしたいもの。

見つめ合えば、どちらともなく頬が緩む。
ああこんな幸せを、ずっと抱きしめて、大切にしていきたいと思う。

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