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87話 ページ40

千冬side








限界だった









場地さんが何かしようとしているのは分かっていた
俺は誰よりも、場地さんを信頼している



東卍を裏切ってないことは分かっている
内輪揉めを起こしたことだって、何かしら考えがあっての行動だ。それは分かっているし、俺も自分ができることで場地さんの力になりたい


だから、場地さんに呼び出された時だって、そこが芭流覇羅のアジトだったとしても、場地さんに何度も何度も顔を殴られても、それが場地さんの力になるならって…

痛いけど苦しいけど平気だった



でも、その場から全員いなくなって一人残されたとき、光の一つも差し込まない真っ暗な闇に襲われた。何もかも分からなくなった



何も見えない、何も分からない

そんな状態でどこへ向かっているか分からない足をただ動かしていた。そしたら、





「松野くん!?」




この姿を一番見られたくなかった…そして、いま一番会いたかった人物が俺の名前を呼んだ




そのあと、ただ真壁に連れられて家に行き、座らされた。傷口が急に痛くなって、思わず顔を歪めた。


俯いていた顔をあげると、ガーゼを持って心配そうに瞳を揺らして俺を見つめる真壁が目の前にいて、






俺は体が勝手に動いて、

そっと、膝を床につけて座っている真壁に覆い被さるように抱きしめ、しがみついた





真壁の体はあったかくて
その体温が、優しく俺の体に染み込んでいく気がして


ここ数日張り詰めていたものが一気に緩み、目に涙があふれて、ゆっくりと頬を伝った


その瞬間、俺の背中に優しくて温かいものが触れて、
視界がぐにゃりと歪んだ。俺は、真壁の背中に回している腕の力をぎゅーと音が出るほど強めて抱きしめた


すると、俺の背中に回っている手がトン、トンと一定のリズムで叩いてくる




限界だった気持ちが和らいでいく




真壁といると安心する
色のない世界に鮮やかな色がつき、ひとりじゃないよと言うように、体全身を包み込むような温かさを与えてくれる



さっきまで出口の見えない真っ暗な場所をひとりで彷徨っていたのに、いまははっきりと自分が目指す出口が見えていた





「……頑張って、」

「……え?」


「…頑張ってって言って、真壁」

「……がんばれ、松野くん」


真壁はそう言うと、背中に回していた右手を俺の頭に持っていき優しく撫でてくれた






うん…まだ頑張れる


真壁の体を強く優しく、より引き寄せた








.

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作者名:ミルクレープ | 作成日時:2021年6月17日 0時

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