63話 ページ16
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夏休みということもあって、夜遅くまで起きてテレビを観ていた。まあ夏休みといってもいつもは23時くらいには寝ているんだが、今日はおばあちゃんとひまわり畑に行っていて帰ってくるのが遅かったのでご飯とかも遅くなりまだ起きているだけである
0時を過ぎて寝支度を済ませてそろそろ自分の部屋に行こうとした時、家のチャイムが鳴る。こんな夜中に誰だろ?この間、佐野くんから龍宮寺さんと仲直りしたと報告の電話で「そういえば、モニター確認しろって何度言えばわかんだ?」とすっごい低い声で言われたのを思い出して、玄関に直行しようとしていた足を止めてモニターを確認する。
佐野くんだ…夜だから暗くて見えにくいけど、佐野くんだった
ドアを開けると、暗いけど佐野くんが怪我をしているのが分かり、口を開いたらいきなり抱きしめられた。苦しいほど強い力で首元に絡みついてくる佐野くんの腕は震えていた。顔についた少し殴られた傷跡、下に目をやると左足の親指付け根に酷く擦れた傷を作っていた。
今まで何があったか事情は分からないが、佐野くんがたくさん頑張ったということはひしひしと感じた
「…佐野くん、頑張ったね。体濡れてるよ?雨に打たれた?お風呂沸かすから入ってあったまろう?」
「………」
「ね?」
少しだけ体を離し無言で私を見つめる佐野くんに優しく伝える。私の問いかけに無言で頷いてくれたから、手を引いて家にあげる。
お風呂を沸かしている間、佐野くんはずっと私のお腹に顔を埋めて抱きついていた。せめて怪我してるところに消毒はしようと言っても離れてくれなかったのでできなかった。
お風呂上がってから絆創膏とか貼ればいいか…今は何言っても離れてくれないだろうし。
そのあと、私も一緒にお風呂へ入れようと無言で手を引き出したからそれは断固拒否して1人で入ってもらった。
「あ、おかえり〜。あったまった?」
「………うん、Aありがとう」
「全然だよこのくらい!」
やっと口を開いてくれた
お風呂に入ってちょっとは落ち着いたかな
「あのさ、今日ていうか昨日か…」
佐野くんは淡々とした口調でさっきまでの出来事を話してくれた。私から離れようとしなかった理由が分かり胸が苦しくなった。
きっと怖くなったんだ…佐野くんは大事な人がいなくなる恐怖を身を持って体感している。またその恐怖が自分の中に蝕んできているんじゃないかと怖くなったんだ
私は佐野くんの胸に顔を埋めて抱きついた
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作者名:ミルクレープ | 作成日時:2021年6月17日 0時