62話 ページ15
万次郎side
「武蔵祭り、一緒行かね?」
好きな子と祭りに行く約束をしているケンチンやタケミっちがちょっと羨ましくなり、Aに電話して誘ってみる
「武蔵祭り?あ、8月3日の?」
「うん」
「ごめん…その日はおばあちゃんとひまわり畑に行く約束があって、」
断られた…
まあ、先約があるなら仕方ない
「でもその次の週にも別のお祭りあるから、それは一緒に行こうよ」
「おう。りんご飴たくさん食いてーな」
「私は、わたあめ食べたいな。あと焼きそばとたこ焼きと、」
あれもこれもと食べたいものをあげていくA
可愛すぎてずっと聞いてられる
「本当食いしん坊だな」
「食べるの大好きだから仕方ない!」
と、開きなおって笑っている。その後も、お祭りや今度バイクでどこか遠出しようと約束して通話を終える。耳にまだ残っているAの声で余韻に浸っていたら、メールが来ていたのに気づく
ペーやん?
メールを開くと、大事な話があるから8月3日〇〇まで来て欲しいという内容だった
つい最近までケンチンと喧嘩していて、他の東卍メンバーを不安な気持ちにさせていた。俺は総長だからその不安を取り除かないといけない責任がある。Aが8月3日予定悪くて助かった。きっと俺はAとの約束を破ってでもペーやんの呼び出しに行ってたと思うから
俺はペーやんに分かったと返信して携帯を閉じた
…………………
目まぐるしい1日だった。ペーやんに呼び出されて行った場所には誰もおらず、武蔵神社着いてからは愛美愛主との大抗争…の最中にケンチンは生死を彷徨って、助かったから本当によかったけど
今日で一生分の感情を使ったんじゃないかってくらい疲れた。さっきまで8月3日だったのに、もう日付けは変わっていた。真夜中なのに、それでも俺は今すぐあいつに会いたかった
家の前に着いてチャイムを鳴らす
もう0時過ぎてるし寝てるに決まってるよな…と思っていたら、ガチャとドアが開いた
「…!佐野くん、怪我し」
Aの言葉を遮って抱きしめる。いつもは力強めすぎたらAが苦しいよな、とかいろいろ考えて抱きしめてるけど、今はそんな余裕なくて、ただどこにも行かないでと縋るように首に回した腕に力を込める
怖かったんだ、ケンチンが死ぬかもと思って…
その恐怖をAに取り除いて欲しかった
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作者名:ミルクレープ | 作成日時:2021年6月17日 0時