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施錠 ページ37

『ふぅ…』


お客さんがいなくなった今、ジャズの人達を帰らせて私は後片付けをしていた

中也来るかなって期待したけど、やっぱりこないか…

少し落ち込みながらテーブルを拭いていきため息をつく


『歌姫かぁ』


お客さんの言葉が頭の中を巡っていく

私なんかが歌姫…一体誰がそんな噂流したのか


拭き終わった布巾を洗い少し口ずさむ


歌うことは好き

好きな人のために歌う歌は特に気持ちが入る


カウンター席をちらりと見れば、そこに居なかったはずの中也の姿を思い浮かべる

いつも疲れた顔で入ってきて席に座れば楽しそうに昼の世界を沢山教えてくれたっけ

沢山褒めてくれて、頭を撫でてくれて


思い浮かべる想い人の面影にくすりと微笑めば私は休憩室へと向かった


その刹那だった


つんざくような銃声の音

ガラスの割れる音

様々な音が混じりあって私の鼓膜は音を拾いきれなくなる

咄嗟にしゃがみ込めば私は何事かと周りを見渡した

耳はキンキンと警笛を鳴らして頭の中を響かせる


銃撃がピタリと止んだ時、私は逃げようと休憩室の窓に手を伸ばした


「見つけたぞ歌姫」


その声に手が止まる


振り返ったらダメ

絶対にダメ

手の震えが止まらない


「おいこっち見ろよ」


鈍い音が響く


近くの壁にナイフが刺さる音

体の震えが止まらないままゆっくりと振り向けば

目の前には見慣れない体格のいい男達が立っていた


『きゃっ!』


腕を掴まれ引き寄せられれば反射で抵抗しようと体が動く

首にピタリとナイフを近づけられれば、私は抵抗をやめた


『誰の差し金よ…っ』

「教えるわけねぇだろ」


ゆっくり

ゆっくり
ナイフが横に動かされる

『ぃ、た…!』


私の首に赤い線が走り、ポタリと血が流れ落ちた


「俺らのために歌えよ歌姫」


耳元で囁かれた瞬間軽く切られた傷に包帯を巻かれて余りの包帯で目と腕も拘束されていく


やだ、やめてよ

動いてよ、この体

なのに恐怖に染められた体はガタガタと震えて壊れたブリキの様

助けて

誰か助けて


悲鳴をあげるよりも先に手で口を塞がれて抱えられる

どうして急に

一体誰が

何の意図があって?

そんな疑問に頭がパンクしそうになりながら頬に一筋の涙がこぼれた


中也


ねぇ中也


助けて


助けて中也


叫びたくても叫べない状況で


私は恐怖に怯えて震えるだけ



歌姫が入れられた檻の鍵は

不気味な音を立てて閉じられました。

崩壊【中也side】→←交渉【? side】



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 中原中也   
作品ジャンル:アニメ
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やつがれちゃんです - このお話すごい刺さりました。切ない感じだけど、二人互いを思ってるところにうるうるきちゃって、、、 もうほんと神作品ありがとうございます (2021年5月5日 22時) (レス) id: 2064407b9e (このIDを非表示/違反報告)
- はい!(о´∀`о)付き合わせていただきます!これからも頑張ってください(*´∀`*) (2018年5月7日 0時) (レス) id: a5de77afb3 (このIDを非表示/違反報告)
きゅぅ(プロフ) - 凪さん» 勿体無いお言葉本当にありがとうございます!!まさか感情表現にも気にしてくださるとは…!書いていてよかったです(泣)もう少しこの二人の物語にお付き合い下さい!嬉しいお言葉本当にありがとうございました! (2018年5月6日 14時) (レス) id: 6ffc724346 (このIDを非表示/違反報告)
- 中也好きにはたまらないお話ですね切ない気持ちなどの感情表現が素晴らしかったです(о´∀`о) これからも応援してます (2018年5月6日 11時) (レス) id: a5de77afb3 (このIDを非表示/違反報告)
音無侑音(プロフ) - きゅぅさん» こちらこそ、コメントが返ってくるだなんて思ってもいませんでした(´;;`)読んでいただき、有難う御座います。いえいえ、もっと気の利く言葉をかけられたらなと思っていました…(汗)はい、最後まで二人の成長に付き合わせてもらいますね!(笑) (2018年5月1日 19時) (レス) id: d3c1a7a9fb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きゅぅ | 作成日時:2018年4月1日 15時

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