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長い影 ページ23

あれから何度眠ったことだろう


起きては互いに寝ぼけたままキスを繰り返して小さく笑って


また抱きしめて目を閉じて……


何度も目を閉じる私に中也が悪戯してきたり


それがエスカレートして昼間から乱れたり…


『ん…』


次こそ起きれば隣にいるはずの中也はいなくて


重たい腰をさすりながらゆっくり起き上がれば床に散らばってる服もないことに気づく


『中也…?』


相手がいないだけで迷子の子供のような不安な心が私を支配する


シーツをドレスのように体に巻き付ければズルズルと裾を引きずりながらリビングまで行った


『ちゅうや…』


寂しい


どこ行ったの?


涙目になりそうで、子供じゃないんだからと思いながら首を横に振る

きっと仕事に行ったんだ、もう夕方だもの。

そう自分に言い聞かせているとカーテンの隙間からチカリと夕日が差し込んだ


私はゆっくりカーテンを開ければ目の前には綺麗な夕日が見えている


それと同じ色をした橙色の綺麗な髪

風になびかれてその髪はふわふわと動き、その度にきらりと光る

上半身裸でその逞しい背中や腕には私がつけたであろう爪の跡がくっきりと残っていた


中也のゴツゴツとした男らしい指の間からは紫煙がゆらゆら揺らめいて夕日に照らされ消えていく


何を今思ってるの?


夕日を見てる?


貴方の瞳は何を語ってる?


夕日は切ないとよく言われるけど

どこかそれがわかった気がする


カラカラとゆっくり扉を開ければその背中に優しく触れた


「!…A」


ちょっと、冷たくなってる


その肌を温めてあげるように、ただ私は黙って擦り寄った


「体…大丈夫か?」


大丈夫


そう言うように頷けばトクリトクリと聞こえてくる背中越しの鼓動に心地よさを感じる


「声を、聞かせろよ」


振り返った中也に胸板が目の前に来て私は中也を見上げた


ドクリ


あら

鼓動が大きくなった?


『中也?』

見上げようとするとぎゅっと抱きしめられて顔が見えない

「莫迦、なんて格好してんだよ…ッ!」


ドク、ドク、ドク、ドク


鼓動が早い


『ごめん、なさい…でも、貴方も同じこと言えるわ』


もう互いに恥ずかしくて


どちらの鼓動が早いのかなんてわからない


私は軽々とお姫様抱っこをされて
リビングの方へ戻っていく


夕日が私を抱えてる中也の背中を照らしてる


その影は長く長く



そしてゆっくり1つになった

簡単な女→←お早うの声が聞きたくて



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 中原中也   
作品ジャンル:アニメ
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やつがれちゃんです - このお話すごい刺さりました。切ない感じだけど、二人互いを思ってるところにうるうるきちゃって、、、 もうほんと神作品ありがとうございます (2021年5月5日 22時) (レス) id: 2064407b9e (このIDを非表示/違反報告)
- はい!(о´∀`о)付き合わせていただきます!これからも頑張ってください(*´∀`*) (2018年5月7日 0時) (レス) id: a5de77afb3 (このIDを非表示/違反報告)
きゅぅ(プロフ) - 凪さん» 勿体無いお言葉本当にありがとうございます!!まさか感情表現にも気にしてくださるとは…!書いていてよかったです(泣)もう少しこの二人の物語にお付き合い下さい!嬉しいお言葉本当にありがとうございました! (2018年5月6日 14時) (レス) id: 6ffc724346 (このIDを非表示/違反報告)
- 中也好きにはたまらないお話ですね切ない気持ちなどの感情表現が素晴らしかったです(о´∀`о) これからも応援してます (2018年5月6日 11時) (レス) id: a5de77afb3 (このIDを非表示/違反報告)
音無侑音(プロフ) - きゅぅさん» こちらこそ、コメントが返ってくるだなんて思ってもいませんでした(´;;`)読んでいただき、有難う御座います。いえいえ、もっと気の利く言葉をかけられたらなと思っていました…(汗)はい、最後まで二人の成長に付き合わせてもらいますね!(笑) (2018年5月1日 19時) (レス) id: d3c1a7a9fb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きゅぅ | 作成日時:2018年4月1日 15時

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