２ ページ10
これを、わざわざ俺に？
今「おい、まさか毒なんて入ってねぇよなぁ……？」
谷「いや、例え三橋の罠だとしてもそれはさすがにないですし、Aさんは普通に今井さんのことを想ってくれてるんだと思いますよ、信じられませんけど！」
さらりとひどいことを言われた気がしたが、俺の頭の中はAさんのことでいっぱいでそれどころではなかった。
女に抱き着かれたのなんて初めてで、あの時の感触と香りが忘れられない。高い位置で揺れる明るい色のポニーテール、そこからふわりと香るおそらくシャンプーの匂い。
どれにしても初めての体験で、夢か罠でなければ信じられない。
今「とりあえずこれは食う、せっかくのAさんの思いを無駄にできん！」
谷「食べたら感想直接伝えた方がいいですよ」
今「う、お、それ、は……」
いつでも真っ直ぐ、真正面からぶつかって行くのが俺の流儀だ。だが、あの人にはそれが出来ない。
今日もそうだ、三橋の罠だなんだと理由をつけたが、実際はあの人を真っ直ぐ見れなかっただけのこと。
ちくしょう、いつから俺はそんな臆病者になっちまったんだ……。
谷「いや、それは臆病とは言いませんよ、奥手なだけでしょ」
今「はっ！貴様やはりエスパーなのか！？」
谷「あんたが声に出してるだけですよ！もうほら！とりあえず学校戻りましょう、今日は出席だけでもしとかないとまずいですよ！」
谷川に引き摺られるように学校に向かったが、着いた時には昼休みだった。弁当を食べた後に、Aさんから頂いたカップケーキとやらを食った。
そんなもの食ったのも初めてだし、母ちゃん以外の女が作ったものを食うのも初めてだ。
見た目の可愛らしさ以上に、美味くて美味くて谷川が一つくれと言うのを無視して全部食った。
この二日感だけで、俺の青春の初めての出来事がこんなに起きた。
もし、Aさんが本当に三橋の罠でなく、本気で俺を好いてくれているのなら……。
今「俺にもついに、彼女が……！？」
谷「そうなりたいなら、次は逃げないでくださいね！」
今「う、うう……」
結局その決意は出来ぬまま放課後を迎えた。そもそも、俺はあの人に会う術がない……。
今「待てよ……」
谷「なんですか、今度は何を思いついたんですか？」
呆れた様子の谷川を無視し、俺は考えた。
あの時、あの人は妙に派手な服を着ていた。それはおそらく私服ではなく、仕事の制服だろう。制服を着るような店といったら、限られる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 90人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もも(プロフ) - とても良い作品ですね！また更新しますか？楽しみにしてます！！ (2019年6月26日 22時) (
レス) id: 57906027dd (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - かなかなさん» 初めまして、コメントありがとうございます！他作品も読んでいただいて嬉しいです、更新頑張ります！ (2018年12月30日 22時) (レス) id: 93a2639ec6 (このIDを非表示/違反報告)
かなかな(プロフ) - 前作から読ませて頂いてました^_^今井君も片桐君も大好きです！応援してます。頑張って下さいね (2018年12月29日 10時) (レス) id: c55ba19e50 (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - すみれさん» 初めまして、コメントありがとうございます！ご期待に添えるよう更新頑張ります！ (2018年12月29日 1時) (レス) id: 93a2639ec6 (このIDを非表示/違反報告)
すみれ(プロフ) - え、こんなの絶対面白いに決まってる……更新楽しみにしてます！ (2018年12月28日 22時) (レス) id: 89ad3b6e7e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：彼方 | 作成日時：2018年12月26日 23時
